埼臨技会誌 Vol67
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【はじめに】健常人における尿外観は、一般的に淡黄色透明であるが、尿が濁る混濁尿を呈する場合がある。原因としては、大きく分けて尿中塩類結晶、尿路感染症などによる白血球尿や血尿などが考えられる。白血球尿は、一般検査を行う上で日常的に遭遇し、鑑別しなければならない疾患もいくつかあるため、その性状や細胞成分をしっかりと観察して検査する事が大切である。今回は、白血球尿の進め方や、沈査の鏡検ポイントについて解説する。【尿中白血球定性検査でのポイント】尿中に出現する白血球の95%以上が好中球である。好中球の存在は、試験紙法の白血球反応や亜硝酸塩が主な指標とされ、細胞数が多いほど、臨床的意義も高くなる。しかし、病態により、好中球以外の白血球が出現している事もあり、特に好酸球とリンパ球の出現は、重要な臨床情報となる。試験紙法は、好中球が有するエステラーゼと強く反応するため、エステラーゼを有しない好酸球やリンパ球の出現時には、試験紙法白血球反応と沈査中の白血球数に乖離が認められる。また、乳び尿からリンパ球の存在を予測することができる。このように定性検査でも病態を推測しながら検査を実施する。【白血球尿の沈査でのポイント】次に、定性検査結果を踏まえて沈査では白血球数(/HPF)や白血球分画や形態をしっかりと観察する。また、疾患や癌の膀胱浸潤など、臨床病態によって特異的な細胞成分や細菌が出現している場合がある。特に白血球尿において見落としてはいけない所見は、1.細菌:試験紙の亜硝酸塩でも検出が可能。但し、無菌性白血球尿の存在も念頭におく。2.白血球円柱:感染症や炎症性疾患(好中球を封入)  間質性腎炎(好酸球を封入)  慢性疾患(リンパ球や単球を封入) 3.植物残渣:膀胱腸瘻の疑い4.植物残渣・異型細胞(腺癌):大腸癌の膀胱浸潤このほか、患者情報や他の検査データにも注意を払う事も大切である。【まとめ】今回のセミナーによって、白血球尿における観察ポイントを理解して頂き、尿検査に興味を持って、明日からの業務に活かせていただければ幸いである。61尿沈渣講演会場:第4会場A(906号室)/視聴会場:第4会場B(905号室) 14:40~15:30座長:小関 紀之(獨協医科大学埼玉医療センター)講師:室谷 明子(埼玉医科大学国際医療センター)尿沈渣検査のポイント!~血尿・混濁尿・膿尿の対応②~

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