埼臨技会誌 Vol67
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【はじめに】尿沈渣検査は、非侵襲的に繰り返し実施でき、尿路感染症などの腎泌尿器系疾患における診断や治療効果の判定などにおいて重要な役割を果たしている。また、近年尿沈渣検査は沈渣成分のみを鑑別し算定報告をするだけではなく、赤血球形態の報告や異型細胞の検出などの付加価値情報を臨床側に提示する事が求められている。しかし、血尿が強い場合(肉眼的血尿の場合)や、混濁(塩類の析出の場合)している場合は沈渣成分の算定すらも困難な場合がある。今回は、肉眼的血尿時の対応と混濁尿の対応を中心に講演をしていく。【肉眼的血尿】肉眼的血尿は小児や25歳以下の若年者を除くと大部分が泌尿器疾患によると考えられている。特に50歳以上の血尿で最も多い原因は膀胱癌である。よって尿沈渣検査での異型細胞の検出は重要になってくる。このような血尿が強いときの対応方法は「市販の溶血剤を使用する方法」、「バッフィーコートを鏡検する方法」など、各施設ごとに様々である。また、溶血剤の使用はコストがかかる、バッフィーコートを鏡検しても観察しにくい等の問題点より、「何も対応を施さない」施設もあると思われる。【塩類】尿中に出現する無晶性塩類は、大部分が摂取した飲食物や体内の塩類代謝によるものである。代謝された成分が腎臓から排泄され、尿路系や排尿後の採尿容器内で、種々の物理学的作用(含有濃度、pH、温度、共存物質など)によって溶解度が低下し、析出する。尿沈渣中に析出する塩類は、酸性尿で認められる無晶性尿酸塩と中性からアルカリ尿で認められる無晶性リン酸塩などがある。尿酸塩の場合は加温または生理食塩水で溶解後に観察を行ない、リン酸塩の場合はEDTA-3Kを0.4%の割合で生理食塩水に溶解した調整液で溶解後に観察を行う。【結語】今回、当施設で行った溶血方法に関する検討データを基に『技』と『業』の融合を紹介させていただく。明日からの臨床現場において少しでもお役立て頂けたら幸いである。60尿沈渣講演会場:第4会場A(906号室)/視聴会場:第4会場B(905号室) 14:40~15:30座長:小関 紀之(獨協医科大学埼玉医療センター)講師:藤村 和夫(埼玉県済生会川口総合病院)尿沈渣検査のポイント!~血尿・混濁尿・膿尿の対応①~

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