埼臨技会誌 Vol67
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572017年に在宅赤血球輸血ガイドが作成され、在宅や小規模医療機関での輸血管理体制・実施体制が整備されつつあり、施設規模に関わらず、より一層安全な輸血管理体制が求められる。血液型誤判定=重大な医療過誤の要因であるため、ABO血液型検査は安全な輸血を行う上で重要な検査であり、適切な手技で検査を進め、誤りのない判定を行うことが大前提である。しかしながら、自身の手技に不安を感じたり、結果判定が困難であったり、不規則抗体を保有していることにより適合血を見つけるのに時間を要してしまったり、ということを少なからず経験しているのではないだろうか。そこで今回、本セッションではABO血液型検査と不規則抗体の基礎と事例を提示し、『どのように考え』『どのように対応すべきか』を考えていきたいと思う。【ABO血液型検査】赤血球型検査ガイドラインには、①オモテ検査とウラ検査の一致している場合には血液型を確定することができるが、一致しない場合にはその原因を精査する必要がある。②同一患者の二重チェックでは同一患者からの異なる時点での2検体で、二重チェックを行う必要がある。③同一検体の二重チェックでは同一検体について異なる2人の検査者がそれぞれ独立に検査し、二重チェックを行い、照合確認するように努める必要がある、と明記されている。オモテ検査とウラ検査のそれぞれに偽陰性・偽陽性の原因があり、異常反応が出た場合にはその原因を考えながら、追加検査を行なっていかなくてはならない。検査の進捗がどんな状況であろうと患者生命が危機的状況であれば、追加検査の途中であっても、その時点で『赤血球製剤はどの血液型製剤を選択するのか・血漿製剤はどの血液型製剤を選択するのか』を常に考えていなければならない。【不規則抗体】患者の血漿(血清)中に含まれる不規則抗体は溶血を引き起こす原因となるため、その不規則抗体の種類や性状を把握し、抗体の有無を事前に検査することは、安全な輸血や適合血液の確保、血液型不適合による溶血性疾患の推測と対応に重要な意味をもってくる。また不規則抗体陽性情報は自施設のみではなく、他施設でも安全な輸血医療を受ける際に必要である。その情報共有手段の一つとして、埼玉県合同輸血療法委員会が作成した、埼玉県内共用の赤血球不規則抗体カードがあり、令和2年6月現在で41施設においてカードが発行されている。(埼玉県合同輸血療法委員会ホームページより引用)【まとめ】今回の事例は、常時遭遇する可能性がある。各施設の使用している試薬や設備によって実施できる対処法は異なるが、その時点での追加検査の考え方を理解することが必要である。不安を感じながら検査を行うよりも、『この場合はどうしますか、ではこの場合は・・・?』と常に疑問を持ち、その一つずつの疑問を解決し、理解を深めていってほしい。輸血専任技師であっても輸血兼任技師・夜間当直者であっても、臨床側からみると、全て同じ臨床検査技師であり、迅速な対応が求められる。正しい知識と正確な検査技術を身に付けて、今後も安全な輸血治療を目指してほしいと考える。日当直講演会場:第3会場A(603号室)/視聴会場:第3会場B(604号室) 10:00~11:30座長:鈴木 翔子(東松山医師会病院)講師:宮澤 翔子(埼玉県済生会川口総合病院) ~この技、明日からの業務に活用しよう~・事例から考えよう! ~明日から実践できる輸血検査の対策法~

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