埼臨技会誌 Vol67
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52薬剤耐性菌は世界中で増加しており、その感染死亡者数は2050年には1000万人とも推測されている。とくにカルバペネム耐性腸内細菌(Carbapenem-resistant Enterobacteriaceae: CRE)の出現は大きな話題となり、本邦では2014年9月に五類感染症に指定された。さらに国外では多剤耐性菌が蔓延し、輸入感染症として国内に持ち込まれ、アウトブレイクした事例も報告されている。原因は薬剤耐性菌がプラスミドを介して、菌種を超えて伝播・拡散するためと考えられる。医療関連感染やアウトブレイクの防止には、薬剤耐性菌を早期に検出することが最も重要であり、我々臨床検査技師に託された使命である。本セミナーでは薬剤感受性結果をどのように読み薬剤耐性菌を見極めるのか、特にグラム陰性桿菌の産生するβ-ラクタマーゼについて初心者向けに解説する。まず薬剤耐性菌の原因は、大きく3つの要因に分けることができる。①不活性酵素の産生②作用点の変化③薬剤の排出である。不活性酵素は種類により耐性化する薬剤の範囲を覚えておくことは必須である。①ESBL:基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(Extended-spectrum β-lactamase:ESBL)は、ペニシリン系薬だけでなく、第三世代および第四世代セファロスポリン系薬およびモノバクタム系薬まで分解することのできるクラスAに属するβ-ラクタマーゼである。ESBLのスクリーニング薬剤は、セフポドキシム・セフタジジム・アズトレオナム・セフォタキシム・セフトリアキソンの5薬剤であり、いずれかの薬剤に耐性を示したものがESBL産生の可能性が示唆される。表現型確認試験では、β-ラクタマーゼ阻害剤であるクラブラン酸を用いその薬剤に対する感受性が回復したら陽性と判定される。②AmpC:AmpC β-ラクタマーゼあるいはセファロスポリナーゼは、ペニシリン系薬および第三世代までのセファロスポリン系薬およびモノバクタム系薬まで分解することのできるクラスクラスCに属するβ-ラクタマーゼのことである。セファロスポリン系薬の加水分解活性は第1世代(セファゾリン)>第2世代(セフロキシム)>第3世代(セフトリアキソン、セフタジジム)の順に強い。AmpC産生菌が実際にどの「世代」までのセファロスポリン系薬に耐性を示すかは、AmpCの産生量および菌種により決まる。AmpC β-ラクタマーゼを疑う感受性パターンは、第3世代セフェム系に耐性で第4世代セファロスポリン系薬とカルバペネム系に感性かつクラブラン酸により賦活化されない場合である。表現型確認試験には、アミノフェニルボロン酸やクロキサシリンを用いて感受性が回復したら陽性と判定される。③CRE:カルバペネム耐性腸内細菌は、メロペネムのMICが2μg/mL 以上またはイミペネムのMIC が2μg/mL 以上かつセフメタゾールのMICが64μg/mL以上と定義されている。CREの主な耐性機序の1つは、カルバペネマーゼの産生によるものであり、カルバペネマーゼ陽性の場合はCPE(Carbapenemase-producing Enterobacteriaceae)とも呼ばれている。本邦で検出頻度の高いメタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)は、カルバペネム系薬に加え、ペニシリン系薬、セファロスポリン系薬やセファマイシン系薬をも加水分解し、かつβ-ラクタマーゼ阻害薬によって阻害されないという特徴がある。表現型確認試験は、従来はMBL 産生菌のみを検出対象としたメルカプト酢酸ナトリウム(SMA)法が用いられていたが、近年はmCIM(modified carbapenem inactivation method)が用いられるようになった。mCIMは、CPEとメロペネムディスクを液体培地で共培養すると、ディスクに含まれるメロペネムが不活化することを利用したディスク拡散法である。この方法は、特別な機器や試薬が不要なことに加えて、現在知られているほぼ全ての型のカルバペネマーゼ産生菌の検出が可能であり、感度・特異度の高さからCLSIでも推奨されている。海外渡航者や長期の介護療養型医療施設入居者は耐性菌のハイリスク患者であり、このような患者の場合、非選択培地のみの検査では耐性菌を見落とす可能性がある。そのため、薬剤耐性スクリーニング培地の有効的な活用が望まれる。近年は全自動PCR検査が導入され、耐性菌遺伝子解析が約1時間で検出可能となり大きな期待が寄せられている。しかし、我々臨床微生物検査技師に求められるスキルは感受性結果を正確に判定し、耐性機序を見抜き解析する力である。当日はグラム陰性桿菌のβ-ラクタマーゼに関して明日から実践できるよう実際の感受性結果を提示しながら解説したい。耐性菌検査講演会場:第2会場A(602号室)/視聴会場:第2会場B(601号室) 9:30~10:10座長:渡辺 典之(埼玉医科大学国際医療センター)講師:小棚 雅寛(埼玉医科大学病院)耐性菌検査と検出のポイント

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