埼臨技会誌 Vol66
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透析患者に対する皮膚還流圧測定検査が有用であった1症例のくらいの割合であるかを求めた。さらに、AS患者群とMR患者群でその割合に有意差が見られるか比較検討した。【結果】健常者CAVI平均値に対し、AS患者群のCAVI平均値は79.1%±16.1%、MR患者群のCAVI平均値は97.9%±17.5%であった。AS患者群はMR患者群に対して有意に低値であった(P=0.001)。ABI値平均:1.10(AS群)、1.08(MR群)。【考察】末梢動脈と同様に大動脈弁においても高度な狭窄であれば、CAVI値に影響し、低値となったと考えられる。CAVI値がそれほど低値とならなかった症例は、狭窄の程度により影響が軽度であった可能性が考えられた。【結語】AS群はMR群に比較して、CAVI値が有意に低値であり、診断の指標になりうることが示唆された。今回はASに対して検討したが、大動脈弁閉鎖不全・大動脈瘤などの大血管疾患・低左心機能(低左室駆出率)などの症例においてもCAVI値に影響が出る可能性もある為、今後さらなる検討が必要であると考える。連絡先048-442-1111(2530)維持透析患者や糖尿病患者は血管の石灰化が多く認められ、ABIのみでは評価が困難である。石灰化症例でのSPPは極めて重要と思われ、生活習慣病の増加に伴い、末梢動脈疾患も増加の一路をたどっている昨今において、より需要が高まってくるものと思われる。連絡先048-442-1111(2530)CAVI値は大動脈弁狭窄症の診断指標となりうるか◎植田 雅子1)、相田 裕人1)、塚原 晃1)、高山 好弘2)◎植田雅子1)、相田裕人1)、塚原晃1)、高山好弘2)戸田中央医科グループ 戸田中央総合病院1)、TMG本部 臨床検査部2)戸田中央医科グループ戸田中央総合病院1)、TMG本部臨床検査部2)【目的】高齢化に伴い、動脈硬化疾患のひとつである大動脈弁狭窄症(以下、AS)は増加傾向であり、ASは重度であっても無症状の場合もあるため、早期発見が課題である。CAVIは理論上血圧に依存しない血管の硬さを反映する指標であるが、血管に狭窄または閉塞があると低値になるため、大動脈弁に高度狭窄がある場合も低値になるのではないかと考えた。そこで今回、重症ASの早期発見を目的として、CAVI値がASの診断指標となりうるか検討を行った。【対象と方法】対象:2015年~2019年に、当院で血圧脈波検査(ABI・CAVI)及び心臓超音波検査を実施した患者のうち、中等度以上の大動脈弁狭窄を認めた20名(平均年齢77.2±7.7歳、男性7名、女性13名。以下、AS患者群)。対照として中等度以上の大動脈弁狭窄を認めず、中等度以上の僧帽弁閉鎖不全を認めた20名(平均年齢68.0±12.1歳、男性15名、女性5名。以下、MR患者群)。ABI値が0.9以下、及びCAVI値が参考値の患者は除外した。方法:年齢と性別の影響を除外するため、年齢・性別ごとの健常者CAVI平均値を100%とし、それに対し患者CAVI値がど◎矢部 加奈子1)、倉重 智子1)、塚原 晃1)、高山 好弘2)◎矢部加奈子1)、倉重智子1)、塚原晃1)、高山好弘2)戸田中央医科グループ 戸田中央総合病院1)、TMG本部 臨床検査部2)戸田中央医科グループ戸田中央総合病院1)、TMG本部臨床検査部2)【はじめに】皮膚還流圧検査(以下SPP)とは、皮膚微小循環の血流を指標とした還流圧のことであり、皮膚レベルの血流評価として使用される。足関節上腕血圧比(以下ABI)と比べ、血管の石灰化の影響を受けにくい点から、維持透析患者や糖尿病患者に対しては特に有用であると考えられている。今回、重症虚血肢患者においてSPPが有用であった1症例を報告する。【症例】60歳代男性。2型糖尿病、高血圧、高尿酸血症、狭心症の既往あり。糖尿病性糸球体腎硬化症により、人工透析導入。X年に右第1足趾潰瘍出現し断端形成術施行し完治。X+2年11月頃より左第1足趾皮膚潰瘍出現。末節骨髄炎の併発も見られた。11月及び12月に経皮的血管形成術(以下PTA)施行、後に下肢切断術を施行した。【身体所見・血液検査】(X+2年11月時点)血圧:130/72mmHg、D-dimer:0.6μg/ml、BNP:1976.3pg/mL、TG:90mg/dL、LDL-Cho:112mg/dL、HDL-Cho:48mg/dL、Cre:8.98mg/dL、BUN:43.0mg/dL【治療、ABI・SPP結果】左第1足趾皮膚潰瘍出現時、左ABI値0.92と正常範囲内であったが、SPP値では左足背18mmHg、左足底25mmHgと低値を認め、血行再検の検討の為下肢動脈エコー検査実施。結果、左下腿3分枝ともに閉塞を認めたため、PTA施行となった。PTA治療後SPP値は左足背23mmHg、左足底36mmHgと改善傾向を認め左第1足趾切断術施行となった。治療後のフォロー検査でSPP値は左足背74mmHg、左足底73mmHgと改善が見られた。【結語】今回の重症虚血肢患者においてのSPPでは、血流評価及び難治性潰瘍の治療評価に有用であったといえる。一般演題 生理一般演題 生理94一般演題一般演題生-19(第5会場 10:35~11:11)生-20(第5会場 10:35~11:11)CAVI値は大動脈弁狭窄症の診断指標となりうるか透析患者に対する皮膚還流圧測定検査が有用であった1症例6465

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