埼臨技会誌 Vol66
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 感染性心内膜炎( infective endocarditis ; IE )は弁膜や心内膜に疣腫を形成し,菌血症,血管塞栓,心障害などの臨床症状を呈する疾患である.適切な治療を行わなければ多くの合併症を引き起こし,死に至る.このため,的確な診断と治療が必須である。 IE の診断には Duke 診断基準が用いられる.病理学的基準と臨床的基準からなり,臨床的基準には大基準として血液培養所見および心エコー図所見,小基準として臨床所見が含まれている。満たす項目の数により,確診,可能性,否定的と判断される.Duke 診断基準を用いた際の診断感度は80%であるが,病初期や膿瘍形成例,人工弁置換術後例,ペースメーカー植え込み後例では診断感度が低下するとされている.最近ではエコーで検出しづらい人工弁置換術後例の弁輪部膿瘍描出に CT や18F-フルオロデオキシグルコース(18F-fluorodeoxyglucose:18F-FDG)PET/CT が有用であるとの報告も多数あり,欧州心臓病学会(ESC)のガイドラインではDuke 診断基準に加えてCT や18F-FDG PET/CTを組み込んだ画像診断基準も IE 診断の基準の一つにあげている.また,「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」では,ESC ガイドラインを参考にIE診断のためのアルゴリズムが提示されている. Duke 診断基準の中で臨床検査技師が関わるポイントとしては,大基準に血液培養所見と心エコー所見があり,診断に重要な検査となるため,検査技師の果たす役割は大きい.IEの診断のために必要な心エコー図では,疣腫は心内膜に付着する塊状あるいはひも状の異常エコー画像として観察される.日本循環器学会の「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」に解説されているように,疣腫は疣腫の長さと形,疣腫数,可動性の有無,付着する弁に注意して観察することが重要である.これらの注意すべき所見についてエコー図を供覧しながら,心エコー所見について解説するとともに,鑑別を要する弁肥厚・縫合糸・パンヌス・血栓・Lambl 疣腫・腫瘍・無菌性心内膜炎などとの鑑別ポイントについても解説する予定である. 今回の教育講演によって,日常検査で心エコーを担当する検査技師と心エコー検査の際に必要な IEの知識と心エコー所見について情報を共有することができ,また,これまで心エコー検査を未経験の検査技師が心エコーに興味を持って頂けるよう期待したい.63教育講演数野 直美…(埼玉医科大学国際医療センター…中央検査部…生理機能検査室)微生物……第3会場 601号室 14:40~15:20心エコー図で感染症を診る感染性心内膜炎

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