埼臨技会誌 Vol66
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 感染症検査は感染症の原因抗原,または感染に伴い産生される抗体を抗原抗体反応を利用して測定する. 感染症のスクリーニング検査としてHCV抗体やHBs抗原が多くの検査室で測定されている. インターフェロンを使用しない経口薬の登場や,2016年にB型肝炎ウイルスの定期予防接種が始まったことなど,近年,肝炎の治療や予防は大きく変わってきている. 以上を踏まえて,今回 C肝炎,B型肝炎について講演を行うので日常業務にも役立てていただきたい. C型肝炎ウイルスのキャリアは我が国では150万人から200万人と言われている.C型肝炎の治療は1992年からインターフェロンによる治療が行われていたが,日本人に多い「ジェノタイプ1b型」はインターフェロン治療に対し難治性を示すため,当初はその治療効果は良くなかった. その後リバビリンとの併用やペグ化製剤などの改善を経て,現在,インターフェロンフリーの直接作用型抗ウイルス薬(DAAs)により,内服による短期間での治療が可能になった. しかし,救急搬送時や入院前,手術前にHCV抗体が陽性になってもHCV感染を知らない患者がいるのが現状である. そういった患者を治療に結びつけるためにもHCV抗体検査を行い,HCV抗体陽性患者を拾い上げていくこと,さらにその後のHCV-RNA検査等現在の感染の有無を調べていくことは重要である. B型肝炎ウイルスの感染者は我が国では110万人から140万人ほどと言われている.HBVの持続感染の多くは、免疫反応がまだ不十分な乳幼児期の感染により,持続感染者の大部分が無症候性のキャリアとなる.2016年からB型肝炎ワクチンがユニバーサルワクチンとして接種されるようになったが,成人してから感染し慢性化する欧米型のジェノタイプAのHBVも増加している. 抗ウイルス治療薬の発達したC型肝炎などと異なり,B型肝炎は治療後もウイルスの遺伝子が肝臓に残るため, 免疫抑制剤などによる抵抗力の低下によって肝炎の再活性化が起こる可能性がある.(de novo B型肝炎) de novo B型肝炎はしばしば劇症化する恐れもあるため,免疫抑制,化学療法を行っている患者に関しては,HBs抗原検査によりB型肝炎の現在の感染を知るだけでなく,HBs抗体検査やHBc抗体検査などを行い,既往感染の有無を把握し,de novo B型肝炎発症に対する対策を行う必要もある.59教育講演多川 裕介…(医療法人社団愛友会…上尾中央総合病院) 免疫血清……第6会場 604号室 9:30~10:10感染症検査 B型、C型肝炎について

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