埼臨技会誌 Vol66
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前後前後前後前後前後前後前後前後【目的】血液形態検査は日常診療活動の根幹をなす基本的検査で,出現している細胞の量的および質的異常から病気の分類・診断や病態の把握を行い,その臨床的意義は大きい.日本検査血液学会血球形態標準化小委員会(以下;血球形態標準化小委員会)では2003年に好中球桿状核球・分葉核球,リンパ球系細胞,2005年に赤血球形態,2008年に骨髄幼若顆粒球系・赤芽球系細胞について標準化を行った.その後,日臨技精度管理調査などの全国的な調査が行われ,標準化された細胞の全国的な普及は特定の細胞を除き浸透していないことが判明した.これらの結果を受け日本検査血液学会と日本臨床衛生検査技師会は血球形態標準化ワーキンググループ(WG)を立ち上げ好中球系細胞の新分類基準に基づき,2014年に健常者を対象に白血球目視分類の基準範囲を設定した.一方,骨髄幼若顆粒球系・赤芽球系細胞については上記に記載した通り全国的な普及は浸透していないことが判明しており,血球形態標準化WGと血球形態標準化小委員会(以下;血球形態標準化合同委員会)は2016年より共同で骨髄幼若細胞分類基準の再検討や共通の骨髄像分類基準範囲を求める作業を進めている.本教育講演では現在進行中の骨髄像分類基準範囲の進捗状況について報告する.【骨髄顆粒球系・赤芽球系細胞の連続画像の作成】骨髄像分類基準範囲を求めるにあたり鏡検者間差の実態と要因を分析する目的で,骨髄顆粒球系・赤芽球系細胞について分化過程の連続画像を作成した.方法は健常者骨髄移植ドナーの骨髄塗抹標本から任意に細胞画像を撮り,幼若細胞から成熟細胞へと細胞が連続して分化していく過程を顆粒球系細胞の連続画像(細胞番号1-1~7-12;骨髄芽球~分葉核球84画像),赤芽球系細胞の連続画像(細胞番号1-1~6-12;前赤芽球~正染性赤芽球72画像)として作成した.【細胞分化連続画像を用いた鏡検者間差の調査方法および骨髄幼若顆粒球・赤芽球分類基準の改訂】顆粒球系連続画像,赤芽球系連続画像を血球形態標準化合同委員会全員に配布し連続画像について細胞分類を行った(例:細胞番号2—1からtypeⅡblast,細胞番号2—4から前骨髄球など).結果の評価は特に細胞境界での細胞分類における各委員のバラツキをみる目的で細胞番号と細胞番号の間を細胞区間で表し,その差を細胞区間差とした(細胞区間差が大きいほど細胞分類にバラツキがみられる).鏡検者間差調査の結果,血球形態標準化合同委員会委員の間においても細胞分類に大きなバラツキがみられた(是正前).その後,各委員間のバラツキを是正する目的で以下の検討を行った.方法は血球形態標準化合同委員会全員を一堂に会し細胞分化連続画像を投影しながら細胞分類における種々の討議や骨髄幼若顆粒球・赤芽球分類基準の再検討を行い,それらの分類基準の改訂を実施した後,再度細胞分化連続画像について細胞境界を中心に細胞分類を行った(是正後).【鏡検者間差是正前後での細胞区間および細胞区間差】各細胞境界において2人以上が異なる細胞に分類した細胞区間および細胞区間差を表に示す.いずれの細胞境界においても鏡検者間の是正前後では明らかに細胞区間および細胞区間差は小さくなり細胞分類の一致に大きな改善が得られた.【細胞分類が異なる境界での一致率の比較およびX2適合検定】細胞分類が異なる境界とそれらの一致率の比較を表に示す. 細胞分類が異なる境界において鏡検者間差の是正前後ではほとんどの細胞境界において是正後では明らかな高い一致率が得られ,各細胞境界間の分類に著しい改善が得られた.また,X2適合検定ではtypeⅡblastと前骨髄球,前骨髄球と骨髄球,桿状核球と分葉核球,好塩基性赤芽球と多染性赤芽球の境界において5%の有意水準で有意な差を認めた. 【アトランダム画像を用いた一致率の向上および不一致の因子分析】連続画像の他に鏡検者間のさらなる一致率の向上を得るため顆粒球系細胞228細胞,赤芽球系細胞228細胞のアトランダムな画像を作成し血球形態標準化合同委員会委員など(骨髄像分類基準範囲を求めるための協力委員も含む)に配布し細胞分類を実施した.アトランダム画像における一致率および不一致の因子分析の解析はほぼ終了し本学会で報告する予定である.【結語】血球形態標準化合同委員会は骨髄像分類基準範囲を求めるために骨髄幼若顆粒球・赤芽球の分類基準の改訂や細胞分類の一致率の向上など種々の検討を実施した.今後,これらの解析結果は日本検査血液学会学術集会,日本医学検査学会での学会発表や関連雑誌への論文投稿(一部終了)および日本臨床衛生検査技師会のネットワークを活用して全国的な普及を行う予定である.表 鏡検者間差是正前後での細胞境界における細胞区間差および一致率の比較細胞境界typeⅡblast前骨髄球前骨髄球骨髄球骨髄球後骨髄球後骨髄球桿状核球桿状核球分葉核球前赤芽球好塩基性赤芽球好塩基性赤芽球多染性赤芽球多染性赤芽球正染性赤芽球*細胞分類が異なる境界での一致率の分子には細胞分類の多いものを用いた分類基準改訂前後2名以上不一致の細胞区間(差)2-3~2-4(1)不一致無(0)2-11~3-6(7)3-2~3-4(2)4-3~4-8(5)4-6~4-7(1)5-5~5-7(2)不一致無(0)6-8~7-1(5)不一致無(0)1-11~2-7(8)1-11~2-6(7)3-1~3-12(11)3-2~3-6(4)6-1~6-5(4)6-4~6-5(1)細胞分類が異なる境界とそれらの一致率2-3,4(72.2,72.2%)2-3,4(93.8,93.8%)3-3(50.0%)3-4,5(62.5,100.0%)4-5,6(88.9,61.1%)4-5,6(93.8,75.0%)5-7,8(66.7,100.0%)5-7,8(93.8,93.8%)6-9,10(55.6,55.6%)6-7,8(100.0,93.8%)2-4,5(55.6,55.6%)2-4,5(81.3,56.3%)3-5,6(50.0,50.0%)3-5,6(53.3,75.0%)6-3,4(66.7,55.6%)6-4,5(82.4,88.2%)58教育講演坂場 幸治…(株式会社ビー・エム・エル 第四検査部 血液学課,防衛医科大学校病院 検査部)血液……第2会場 403・404号室 9:40~10:20日本検査血液学会・日本臨床衛生検査技師会血球形態標準化委員会の最近の動向-細胞分化連続画像等を用いた細胞分類一致率の向上および不一致の因子分析-

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