【はじめに】 医療安全とは、医療事故や紛争を起こさないための方策とともに、医療事故や紛争が起きた場合の対応策に取り組むことである。当院においても、医療安全対策室を中心に啓蒙活動も含め幅広く活動を行っている。 医療安全の範囲は広く①患者の安全、②職員の安全、③医療事故への対応、④医療の質の担保などが重要であるとされている。つまり、検査時の事故対策のみが医療安全ではないのである。講演では時間的な制約もあるため、検査時に想定される医療事故の対応等を中心にした内容を予定しているが、本抄録では四病院団体協議会医療安全管理者養成委員会編集のテキストを基に、医療安全の概論的な内容を述べさせていただく。【なぜ医療安全なのか】 国民の医療に対しての不信は、医療事故や医療過誤が起こるたびに強くなり、状況は深刻である。 不信の理由は、情報の開示が不十分であることや、医療事故を含め安全に関する問題に対して、改善や質向上の努力が十分ではないためと言われている。安心と信頼を得るためには、医療の安全を確保することが基本とされている。【防止から安全確保の観点へ】 医療事故に対する国民の関心は高い。患者の取り違い、誤った薬の投与など医療事故が起こる度に、様々なマスメディアを通して大々的に報道がされる。医療事故は医療業界のみならず社会的な問題となっており、医療事故防止は社会の強い要請でもある。 しかし、医療事故を完全に防止することは困難である。求められる対応は、防止の観点にプラスして安全確保という視点も必用となってくる。安全確保には医療安全に対する対応の質的向上が求められ、良い結果へ導く方策・仕組みを企画、計画、検討しなければならない。医療事故対策のみではなく医療安全管理者の養成・育成も医療現場に求められる観点である。【To Err is Humanという考え方】 人は間違える生き物である(To Err is Human)。他人が失敗しても、「自分だけは大丈夫」と思い込む。また、自分が失敗しても「同じ失敗はもうしないだろう」と思い、時間の経過とともに過去の教訓がいかされない。一般的に事故の記憶は時間とともに忘却される。そしてまた繰り返される。【未然防止】 未然防止とは、トラブルや現場での事故などを、起きる前に(=未然に) 防ぐための活動を指す。未然防止を実行するには、過去の失敗や過誤の事例を分析し、原因の追求を行い、対策を実施することが必要となる。未然防止の達成には以下に示す4段階の検討が必要とされる。①危険・事故の予測および予知②危険・事故の防止または回避③危険・事故対処と拡大防止④危険・事故の再発防止 全職員の柔軟な対応・発想の転換等がないと未然防止の実施は困難とされている。【医療における安全とは】 一般的に医療の安全には、以下の5つの観点があるとされている。①患者の安全②医療従事者の安全③医療関係者の安全④地域の安全⑤不特定多数の安全 患者の安全が第一ではあるが、患者の安全確保を行うために、②以下の安全確保が重要とされている。【医療安全対策】 2000年8月の医療審議会で、医療安全対策の推進について7項目の推進方策が提出された。①インシデント事例の収集・分析の確立②医療機関内の安全確保のための情報化システム化③医療安全の確保のための調査研究の推進④医療安全担当者等の人材育成⑤医療の安全性に関する教育・研修の強化⑥医療現場における安全性の確保⑦事故防止に配慮した医療機器・医薬品の生産促進 上記の項目に関して、各々の施設で実施されているが、その効果は各施設において差が有り、どのように対応するべきか分からないのが実情である。【まとめ】 医療事故・医療過誤の撲滅が叫ばれているなか、各病院施設が安全対策等を実施している。より成果をあげるためには、質の向上と品質管理が効果的と言われている。検査室においても、ISOをはじめとした品質管理が重要視される時代である。医療安全においても各対策に対するPDCAサイクルを活用し、質向上にむけた取り組みが必要であると思われる。57教育講演内山 健二…(獨協医科大学埼玉医療センター) 生理機能……第1会場 401・402号室 11:00~11:40生理検査室における医療安全
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