埼臨技会誌 Vol66
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◎北川綾1)、桐生遥香1)、高嶋眞理2)、西澤美穂子2)、松本健宏3)、冨永晋4)、柳田絵美衣5)、廣井禎之2)◎北川 綾1)、桐生 遥香1)、高嶋 眞理2)、西澤 美穂子2)、松本 健宏3)、冨永 晋4)、柳田 絵美衣5)、廣井 禎之2) 新渡戸文化短期大学臨床検査学科病理学ゼミ1)、新渡戸文化短期大学臨床検査学科2)、戸田臨床検査研究所新渡戸文化短期大学 臨床検査学科 病理学ゼミ1)、新渡戸文化短期大学 臨床検査学科2)、戸田臨床検査研究所 病理3)、 病理3)、防衛医科大学校臨床検査医学4)、慶応義塾大学医学部ゲノムセンター5)防衛医科大学校臨床検査医学4)、慶応義塾学医学部ゲノムセンター5) 【はじめに】 2014年の日本における黄色ブドウ球菌に占めるMRSAの割合は51%と高く、我が国でも2020年までに耐性率を20%以下に低下させるAMR対策アクションプランが立てられた。この対策により、耐性率は減少しつつある。しかし、近年では院内だけでなく、市中型MRSAが入院歴のない健常者に広まっていることが問題となっている。私たちは健常者を対象に鼻腔と咽頭で黄色ブドウ球菌の保菌調査を行ってきたが、そこで分離されたMRSAについて報告する。 【対象】 保健医療系を専攻する大学生、延べ313名を対象として保菌調査を行った。このうち、1年の間隔をおいて2回の調査が出来た対象者は111名だった。この調査で得られた4株のMRSAを対象とした。 【方法】 対象のMRSA菌株から、Q1Aamp DNA Mini kit(QIAGEN)を用【背景】私たちの体には死後、もしくは外科的に切除された組織には死後変化がおこる。具体的には、1)自家融解、2)腐敗、3)乾燥(ミイラ化)および4)死蝋(死蝋化)である。しかしながら、何日も経過した死体や組織の一部、血痕などからもDNAを抽出し、DNA検索が行われている。 【目的】死後や外科切除後における組織保存状態、及び抽出後の保管によるDNAのクオリティーを検討することを目的として種々の条件下でDNA抽出を行い、DNAクオリティーの評価を行った。 【対象と方法】対象は胆石にて外科切除した胆嚢とした。組織の保存条件は、1)1次サンプル受領後2時間、2)生理的食塩水で湿らせたガーゼに包み室温16時間、3)生理的食塩水に浸漬し16時間、4)生理的食塩水で湿らせたガーゼに包み4℃ 16時間、5)容器に入れ蓋をしないで室温16時間(組織の乾燥)および6)容器に入れ蓋をして16時間(蓋をしただけ)とした。DNA抽出は、DNA抽出カラム(DNeasy : QIAGEN)で行った。DNAクオリティー評価は、1%アガロースゲルで電気泳動しバンドを検出した。さ健常者の保菌調査で見つかったMRSAの解析 い、送付のプロトコールに従ってDNAを抽出し、SCCmec型とMLSTを決定した。 【結果・考察】 対象者313名のうち、4名がMRSAを保菌していた。そのうち1名は鼻腔のみ、もう1名は咽頭のみ、2名は鼻腔と咽頭の両方でMRSAの保菌が確認された。追跡調査ができた3名の保菌者のうち2年連続でMRSAを保菌している者はおらず、保菌は一過性のものだったと考えられた。 SCCmec型は全てⅣ型であったが、染色体の型であるMLSTは全て異なっていた。そのうちの1菌株は、埼玉県内の病院から分離の報告があるMRSA株のST834と一致していた。 これらの菌株について、さらに薬剤感受性パターンや他の病原因子の保有状況について検討を進める予定である。 連絡先:048(973)4728(直通) らにDNA Integrity Number (DIN値)およびDNA濃度測定およびDNAサイズと濃度の分布グラフにより行った。さらに4℃で3ヶ月保存し、同様な評価を行った。 【結果】いずれの保存方法においても高分子DNAが確認され、スメアは認められなかった。DINは6.5〜7.9(平均7.3、中心値7.2)といずれの保存方法でも断片化は軽微であった。DNA濃度は19.4μg/μL〜56.8μg/μL(平均31、中心値34.6)と検体ごとに差異が見られたが、抽出した組織重量の違いによる結果と考えた。DNAサイズと濃度の分布グラフにより、いずれにおいても15,000以上48,000近くにピークが見られ断片化のない良質なDNAであることが確認された。3ヶ月保存後の抽出DNAでは、1サンプルにおいてDNA濃度上昇、軽度の断片化が確認された。水分の蒸発による変化と考察した。 【結論】DNAは抽出までの組織保存状態によるクオリティーの変化は軽微である。抽出後のDNA保存は密栓することが大切と考えた。 連絡先:03-3381-0121 ◎京野那奈美1)、阿部恵利子1)、梅田春香1)、岸井こずゑ1)、村井美代1)◎京野 那奈美1)、阿部 恵利子1)、梅田 春香1)、岸井 こずゑ1)、村井 美代1) 埼玉県立大学健康開発学科検査技術科学専攻1)埼玉県立大学 健康開発学科 検査技術科学専攻1) 138学生演題学生演題学微-5(第3会場 13:50~14:35)学病細-1(第6会場 13:10~13:37)健常者の保菌調査で見つかったMRSAの解析組織保存状態および抽出後の保管による組織保存状態および抽出後の保管によるDNAのクオリティー DNAのクオリティー

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