埼臨技会誌 Vol66
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血 液果9㎕/dLと低値を示した.ミネラリン1Aに切り替え,貧血,好中球数の改善を認めた.環状鉄芽球14%, 染色体分析は正常核型であった.【文献考察】13例を平均した結果,好中球数361/㎕,Hb6.5g/dL,PLT216×109/Lとなりbicytopenia(好中球,Hb)であった.MDS様の形態異常の記載はみられなかった.【考察】銅欠乏症は白血球数,Hbの低下を示すとされているが,具体的な数値は示されていない.今回症例報告の検索により,好中球数72∼563/㎕,Hb3.0∼9.5g/dLであった.好中球,血小板の形態異常のみられない原因不明のbicytopeniaの場合,経管栄養,亜鉛の摂取等の情報を基に銅とセルロプラスミンの検索が必要と思われる.本症例◎白石 拓也1)、大野 みどり1)、石川 理恵1)、鈴田 和樹1)、山田 麻育子1)、濱野 澄人1)◎白石拓也1)、大野みどり1)、石川理恵1)、鈴田和樹1)、山田麻育子1)、濱野澄人1)東松山市立市民病院1)東松山市立市民病院1)【はじめに】銅欠乏症における骨髄所見の特徴は赤芽球系,顆粒球系に空胞を有することで知られている.今回研修会での症例経験から銅欠乏症を疑い速やかに診断された症例を報告する.また,文献検索を行い末梢血検査から銅欠乏を疑う所見について検討した.【症例】70歳代女性,アルツハイマー型認知症,低アルブミン血症,慢性C型肝炎,右水腎症,半年程前より嘔吐,鼓腸反復の為CVポート(ラクテックG,フルカリック2号)増設,徐々に汎血球減少,浮腫を認めたため当院紹介受診,精査加療目的にて入院となる.【検査所見】末梢血所見:WBC 0.5×109/L(好中球198 /㎕異形成なし), Hb3.9g/dL , PLT 64×109/L, TP 5.6g/dL, ALB 2.1 g/dL, T-Bil 0.4㎎/dL, ALP 216U/L, AST 44 U/L, ALT 55 U/L, LDH 261 U/L, ViB12 2480pg/mL, 葉酸 18.8ng/mL, 鉄 148㎍/mL, フェリチン 1587.6ng/mL, 骨髄所見:有核細胞数15.5×104/㎕, 巨核球数 150個/㎕, 正形性骨髄, ME比1.71, 芽球 0.8%, 赤芽球系,顆粒球系の幼若細胞に空胞形成を認めたことから銅欠乏を疑い,血清銅を追加した結◎星 聖子1)、羽鳥 浩司1)、市川 香代子1)、桜井 絢音1)、大川 修1)、小林 望1)◎星聖子1)、羽鳥浩司1)、市川香代子1)、桜井絢音1)、大川修1)、小林望1)独立行政法人 地域医療機能推進機構(JCHO) さいたま北部医療センター1)独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)さいたま北部医療センター1)【はじめに】透析患者の赤血球造血刺激因子製剤療法にて治療を行う際,機能性鉄欠乏を適切に診断し鉄の補充療法を行う必要がある.RET-Heは網赤血球1個あたりのヘモグロビン量に相当される項目とされ,短期間の鉄のマーカーとして注目されている.本研究では自動血球測定装置XNシリーズでRET-Heを測定,鉄関連項目と比較する事でRET-Heの鉄欠乏状態検出に最適な感度・特異度を検討した.【対象と方法】対象は2018年11月~2019年6月までに当院にて網赤血球数と同時に血清鉄・フェリチン・TIBCの測定依頼があった217件とした.鉄欠乏検出の感度・特異度については①絶対的鉄欠乏として日本鉄バイオサイエンス学会のフェリチン<12ng/ml,TSAT<20%と②機能性鉄欠乏として日本透析医学会ガイドラインのフェリチン<100ng/ml,TSAT<20%の2つの定義を用いてそれぞれ検討し,感度・特異度・正診率を算出した.【結果と考察】1.RET-Heと鉄関連項目との比較では血清鉄がr=0.476,TIBCがr=-0.420,TSATがr=0.545との血小板減少は肝疾患によるものと思われる.【結語】当院の骨髄像は外注項目であるが,微量元素補充のない高カロリー輸液が原因の銅欠乏症を早期診断,治療ができたことは研修会での症例が参考となった.良好な相関を認めたのに対し,フェリチンではr=0.246と弱い相関を認めた.(P<0.05)フェリチンの感度及び特異度が低いのはフェリチンが急性反応蛋白としてや頻回輸血により高値になる為だと考えられる.2.鉄欠乏症における感度・特異度は①絶対的鉄欠乏ではRET-He=29.5pgで感度82.1%,特異度81.0%,正診率81.1%,②機能性鉄欠乏ではRET-He=31.0pgで感度75%,特異度74.5%,正診率74.7%であった.またMCHが正常でもRET-Heが低下している症例では鉄欠乏をきたしている例も認め,RET-Heは早期の鉄欠乏状態を示唆する可能性があると考えられた.【結語】RET-Heは網赤血球数と同時に測定され,新たな採血や試薬も不要などの利点も多く,鉄関連項目においても良好な相関を認めた.絶対的鉄欠乏ではRET-He29.5pg,機能性鉄欠乏ではRET-He31.0pgをカットオフ値と設定する事で鉄欠乏状態検出に有用と考えられた.またMCHが正常でもRET-Heが低下している場合,鉄欠乏状態の可能性を考慮し鉄関連項目の精査が望まれる.連絡先:048-663-1671(内線161)連絡先:0493-24-6111 (内線242)一般演題 血液一般演題 血液研修会の経験が早期の診断に至った銅欠乏症の一例鉄欠乏症検出における網赤血球ヘモグロビン等量(RET-He)の有用性115一般演題一般演題血-6(第4会場 13:29~14:05)血-7(第4会場 13:29~14:05)鉄欠乏症検出における網赤血球ヘモグロビン等量(RET-He)の研修会の経験が早期の診断に至った銅欠乏症の一例有用性2223

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