埼臨技会誌 Vol66
104/163

89性をスクリーニングするstring testは5mm以上で陽性であり,患者背景と菌の性状からhvKP感染の可能性を臨床医へ報告した.Microscan WalkAway 96 Plus,En Combo 2Jパネル(BECKMAN COULTER)による同定検査でKlebsiella pneumoniaeと同定された.また,薬剤感受性検査では,ABPC以外のすべての抗菌薬に感受性を示した.【考察】hvKPはnon-hvKPに比べ,肝膿瘍から血行性感染を介して難治性髄膜炎や眼内炎など重症化する報告が多く,死亡率も有意に高いことが報告されている.よって,早期の診断と適切な治療が患者の予後に関わるため重要であると考えられる.今回の症例では渡航歴とグラム染色像,そしてstring testの実施により早期にhvKPを疑い,臨床と情報を共有することができた.特に肝膿瘍を伴うhvKP感染症の罹患率は,欧米に比べ台湾・中国をはじめとするアジア諸国で高いことが報告されているため,直近に渡航歴のある患者の検体が提出された場合は,積極的にhvKPを疑って検査を進めていくべきである.抗酸菌培養検査提出数は年間690~1,020件であった。以下、年度別に比較した培養分離数と分離率を記す。M. aviumは分離数23~43株で、分離率2.9~5.1%(平均3.8%)intracellulareは3~12株、0.3~1.5%(0.7%)であっ、M. た。また結核菌では2~13株、0.3~1.6%(1.2%)だった。分離株数を性別で比較すると、NTMは59.1%と女性がやや多く、結核菌では男性が71.6%と男性優位だった。NTMの年代別の比較では50代以降が94.3%を占め、70代が50.0%と最も多かった。【考察】 年度によりばらつきがあるが、結核菌は減少傾向であるのに対してMACは微増していた。なかでもM. intracellulareは2015年まで分離率が0.5%程度であったのに対し、2016年以降は1%を超え増加の傾向がみられた。性別、年代別では既報と一致した。M. intracellulareの増加が一時的なものなのか、今後もNTM分離状況を継続的に集計し検討していきたい。           連絡先 048-965-2221(内2255)連絡先:04-2995-1511(内線3220)◎神谷 明1)、濱本 隆明1)、古桑 美香1)、松熊 晋1)◎神谷明1)、濱本隆明1)、古桑美香1)、松熊晋1)防衛医科大学校病院1)防衛医科大学校病院1)【はじめに】過粘稠性を示すhypervirulent Klebsiella pneu-moniae(hvKP)による,肝膿瘍や転移性膿瘍を特徴とする侵襲性感染症は,アジア諸国を中心に世界的に報告がみられる.我が国においても,主に市中感染によるhvKP感染症の報告が近年増加してきている.今回われわれは,中国から帰国後に肝膿瘍をきたし,培養でhvKPが検出された1症例を経験したので報告する.【症例】50歳代男性.中国に49日間滞在し,帰国後2日目に高熱・悪寒・倦怠感・食欲不振を認め他院を受診後,当院に輸入感染症の疑いで緊急入院した.血液検査にて肝胆道系酵素の上昇と,胸腹部骨盤造影CTにて肝膿瘍を認めたため膿瘍ドレナージを施行した.抗菌薬治療(MEPM+MNZからCTRX+MNZに変更)と膿瘍ドレナージを継続し改善傾向となり,入院11日後に退院し,以後は外来フォローとなった.【微生物学的検査】膿瘍培養時のグラム染色所見は,ピンク色の莢膜を伴う太いグラム陰性桿菌を認めた.翌日,分離培地にムコイドを形成したコロニーが発育した.過粘稠◎稲垣 理絵1)、千葉 明日香1)、前田 友子1)、石井 直美1)、高村 さをり1)、桜井 義一1)、五十里 博美1)、渋谷 賢一1)◎稲垣理絵1)、千葉明日香1)、前田友子1)、石井直美1)、高村さをり1)、桜井義一1)、五十里博美1)、渋谷賢一1)越谷市立病院1)越谷市立病院1)【はじめに】 非結核性抗酸菌(nontuberculous mycobacteria:NTM)は結核菌とらい菌以外の総称であり、現在150種以上が知られている。肺NTM症の罹患率は急増しており、そのうちMycobacterium aviumとMycobacterium intracellulareは通称MAC(M. avium complex)と呼ばれ、肺NTM症の80%以上を占める。今回、過去10年間の抗酸菌検査を対象に当院におけるNTM分離状況を集計した。【対象および方法】 2009年4月から2019年3月までの10年間で臨床検査科に提出された抗酸菌検査8,240件を対象とした。塗抹検査は院内で実施し、培養、同定、PCRは外部委託業者に検査依頼した。 検出された抗酸菌について年度別に分離数、分離率、性別、年代別等集計した。同一患者の陽性菌は年度内の重複を避け、また複数菌種検出されたものはそれぞれ1株とした。【結果】一般演題 微生物一般演題 微生物国外での感染が疑われた過粘稠性klebsiella pneumoniae感染症の1症例非結核性抗酸菌における分離状況102一般演題一般演題微-8(第3会場 10:07~10:43)微-9(第3会場 10:44~11:12)過粘稠性Klebsiella pneumoniae感染症の1症例国外での感染が疑われた非結核性抗酸菌における分離状況

元のページ  ../index.html#104

このブックを見る