埼臨技会誌 Vol
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94連絡先:048-973-4797尿中Tamm-Horsfall蛋白の精製及び性状の検討 月経周期に伴う尿中Tamm-Horsfall蛋白の検討 ◎田代 七海1)、高田 優真1)、酒井 伸枝2)◎田代七海1)、高田優真1)、酒井 伸枝2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、埼玉県立大学2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、埼玉県立大学2)◎高田 優真1)、田代 七海1)、酒井 伸枝2)◎高田優真1)、田代七海1)、酒井 伸枝2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、埼玉県立大学2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、埼玉県立大学2)【はじめに】 Tamm-Horsfall蛋白(THP)は,健常人の尿中に排泄される主要蛋白の一つである.妊婦尿から精製される免疫抑制効果を持つウロモジュリンとTHPではアミノ酸配列が同一であることが知られているが,臨床的意義は明確にされていない.そこで,尿中からTHPを精製し,性状について検討した.【対象】同意が得られた男子尿(16例)及び女子尿(30例)の尿をそれぞれプールし検討試料とした.【方法】THPの精製法は,尿をNaClで終濃度0.58mol/Lとして1晩塩析させた後,それを0.58mol/LのNaClで洗浄する過程を数回行い,透析し精製する方法が用いられている.これには塩析回数1回のReinhartらの方法,塩析回数が3回と多く煩雑なBenkovicらの方法があり,今回この二法を用いて男子尿,女子尿についてTHPの精製を試みた.精製したTHPの性状について,質的検討を電気泳動法により行った.①SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-【はじめに】Tamm-Horsfall蛋白(THP)は,遠位尿細管上皮細胞で産生され,健常人尿中に排泄される糖蛋白である.また,THPは妊娠女性の尿中から免疫抑制活性をもつ糖蛋白として分離されている.これまでの研究より,THPの排泄量は月経周期に伴って変動することが判明している.今回は症例を追加して,月経周期の基礎体温変化と尿中THP排泄量との関係及び分子量,等電点の変化について検討した.【対象】本研究の同意が得られた本学の女子学生2名の早朝尿(月経の期間を除く)を用いた.【方法】基礎体温は,毎朝覚醒時,離床前に舌下体温計を用いて測定し,その変動から月経周期を捉えた.THP排泄量測定は,西牧らのELISA法を用いて行った.THPの質的検討は,SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(以下SDS-PAGE)及びウエスタンブロッティング(以下WB)法から分子量を測定し,高圧セルロースアセテート膜電気泳動(以下IEF)及び自然転写法から等電点を測定して,月経周期に伴うTHPの変化を調べた.【結果】基礎体温測定では,2例とも正常月経周期が示す低温期と高温期の2相性となり,その間で排卵期を示した.THP排PAGE)及びウエスタンブロッティング法からTHPの分子量を測定した.②ポリアクリルアミドゲルを用いた等電点電気泳動(IEF-PAGE)によって,THPの等電点を測定した.【結果】 THPの分子量は,精製前後の男子尿,女子尿いずれも72.6~80.8kDa付近に幅の広いバンドを認めた. 等電点も同様にいずれもpI5.2~5.5付近に2,3本のバンドを認めた.しかし,プール尿ではpI5.2~5.5の中でpI5.5に最も濃いバンドが出現したのに対し,精製後ではpI5.2のバンドが最も濃く見られた.また,プール尿のpHが6.8であるのに対し精製したTHPはpH5.4であった.このことから,pHがpIのピークに影響を与えていると考えられた.【まとめ】 今回の結果からは精製法によるTHPの性状の違いは見いだせなかった.しかし,違いがみられないのであればより簡便であるReinhartらの方法を用いることが好ましいと考える.今後はその他の精製法や,妊婦尿中に存在するウロモジュリンについても比較検討をしていきたい. 連絡先: 048-973-4797泄量は,低温期で2.54~8.42mg/dl,排卵期で4.27~6.90mg/dl,高温期で3.48~29.47mg/dlを示し,排卵期直後の高温期にピークを示した.分子量は全周期を通して73.3~81.9kDaの範囲で検出され,月経周期に伴う変化は認められなかった.等電点は,低温期にpI4.31~4.68,排卵期にpI4.36~4.79,高温期にpI4.18~4.90の範囲でバンドが出現し,低温期及び排卵期はpI幅が狭く,高温期ではpI幅が広く検出された.【考察】THP排泄量のピークは,過去の研究も踏まえると,排卵期を中心に前後2日の期間で見られ,個人差が認められた.THPの分子量は月経周期に伴う変化は認められなかったが,等電点では低温期及び排卵期に比べ,高温期ではpI幅が広く検出された.この等電点の違いはTHPがシアル酸を含む糖鎖構造をもつ蛋白であることから,高温期に糖鎖構造の変化が生じた可能性が考えられる.今後は,排卵促進作用があり,分泌のピークが排卵を示すLHとの関連から,THPによる排卵日を推定できる可能性について検討していきたい.尿中Tamm-Horsfall蛋白の精製及び性状の検討月経周期に伴う尿中Tamm-Horsfall蛋白の検討EntryNo. 99EntryNo. 93般-4(第7会場 9:58~10:35)般-5(第7会場 9:58~10:35)
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