埼臨技会誌 Vol
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―ブドウ糖と亜硝酸塩への影響― 血 液一 般尿定性検査における再検基準の見直し93尿中アスコルビン酸の検討 【目的】尿中アスコルビン酸(AsA)は,試験紙による定性検査においてブドウ糖,潜血,亜硝酸塩,ビリルビンの結果を偽陰性化させる一要因となっている.AsAは摂取するとほとんどがすみやかに尿中に排泄されるが,その定量法としては一般的に実施されていない.そこで,尿中AsAの定量法について検討し,さらに尿定性検査への影響を検討した.【方法】1. AsAの還元性を利用した定量法2法①②の検討:①インドフェノール比色法,②α.α’-ジピリジル試薬を用いた比色定量(以下ジピリジル法)について検出感度,精密度を検討した.2. 試験紙法への影響:AsA標準液1mg/dlを用いて試験紙法のブドウ糖と亜硝酸塩検出について,AsAの影響を検討した.ブドウ糖溶液(1+:100mg/dl)にAsAを25mg/dl,50mg/dl,100mg/dlになるように添加し,試験紙法で検出した.また,亜硝酸ナトリウム溶液(弱陽性:0.1mg/dl)も同様に添加し,試験紙法で検出した.【結果】1.AsA定量法の検討:①の検量線は y=-0.0023x+1.5305,②はy=0.1924x-0.0011でいずれも良好【はじめに】目視判定による再検が多い尿定性検査の業務効率を図る目的で,再検基準の見直しを実施したので報告する.【検討項目】再検基準を設定している9項目のうち,再検率が高い潜血(12.3%)とケトン体(3.5%)について検討した.測定機器はUA-ROBO700i(テクノメディカ社),尿試験紙は機器判定用にUAテスト700i(和光純薬株式会社),目視判定用にウロペーパーK,ウロペーパーH(栄研化学株式会社)を使用した.【方法と対象】従来の再検基準は,潜血は機器判定で2+以上,ケトン体は機器判定で1+以上を専用試験紙で目視判定するとしている.潜血,ケトン体それぞれ再検となった検体に対し,機器判定と目視判定結果の一致率を調査した.調査期間と再検総数は潜血が2018年3月の1週間で計102件,ケトン体は2018年4月の1ヶ月で計147件であった.【結果】①潜血:完全一致率が70.6%(72/102件),1管差一致率が29.4%(30/102件)であった.さらに,本来再2.試験紙法への影響:試験紙ではブドウ糖(1+:100mg/dl)に対して50mg/dl AsAの添加で(-)に変化した.亜硝酸塩(弱陽性:0.1mg/dl)はAsA25mg/dlの添加で(-)となり,AsA濃度による影響の差はあったがいずれも陰性化した.【まとめ】今回検討したAsA定量2法を比べると,操作が簡便で再現性が良いことからインドフェノール比色法がより簡易定量法として適していると考えられた.試験紙法への影響は,ブドウ糖 (100mg/dl)においてAsA 50mg/dl以上で,亜硝酸塩(0.1g/dl)では25mg/dl以上のAsAによって陽性が陰性化することが分かった.試験紙法ではビリルビンやヘモグロビンについてもAsAの影響があるといわれているので今後検討していきたい.       連絡先: 048-973-4797な直線性があったが①は右下がりの検量線となった.検出は①,②とも2mg/dlから検出可能であった.同時再現性はAsA 100mg/dlでの変動係数は①は良好であったが,②は変AsA濃度1,10,100mg/dlによる添加回収試験は①の回収率は66%~145%となったが,②は①と比べ不良であった.動幅が大きくなった.日差再現性も同様の結果となった. 検をしない機器判定で1+以下であった77件を抽出し目視判定した結果,すべて1+以下を示し,そのうち2管差以上の乖離(機器1+目視-)を認めたのは1件だけであった.②ケトン体:機器判定と目視判定結果を比較すると,機器1+,目視-となった偽陽性例が2件あり,どちらも着色尿を呈していた.【変更後の再検基準】①潜血:再検対象となった102件全件の誤差が1管差以内であったこと,非再検対象77件では2管差以上の乖離を認めたのは1件だったことから,潜血を再検項目から除外した.②ケトン体:偽陽性結果の原因は着色尿によるものと考え,従来の再検基準を変更した.ケトン体は,目視で色調を確認し着色尿と判定したものに関しては,機器判定後に専用試験紙での目視判定を実施することとした.【まとめ】再検率の低下により業務の効率化が可能となった.今後は結果の精度を一定に保つために,目視判定における人の精度管理の整備に着手し,尿定性検査の標準化に向けて取り組んでいきたい.連絡先04-2995-1511(3212)◎吉原 理紗1)、酒井 伸枝2)◎吉原理紗1)、酒井 伸枝2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻 1)、埼玉県立大学2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、埼玉県立大学2)◎土屋 貴絵1)、石井 恵1)、河端 正樹1)、坂口 武司1)◎土屋 貴絵1)、石井 恵1)、河端 正樹1)、坂口 武司1)防衛医科大学校病院1)防衛医科大学校病院1)EntryNo. 90EntryNo. 67尿中アスコルビン酸の検討―ブドウ糖と亜硝酸塩への影響―尿定性検査における再検基準の見直し般-2(第7会場 9:30~9:57)般-3(第7会場 9:30~9:57)

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