埼臨技会誌 Vol
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全自動血液凝固測定装置CA-1500におけるDダイマーとFDPの測定可能域の再検討92【目的】DダイマーとFDPはDICや血栓症などの指標として多くの施設で必要不可欠な検査となっており,早急に検査結果を出さなければならない場合がある.迅速な検査結果を出すために,当院では3年前から全自動血液凝固測定装置CA-1500を導入したが,当院特有の測定における癖が見えてきた.シスメックスが提示している線溶系検査の測定範囲内においても測定ができず,何度も再検査を行うために検査時間が長くなるという問題が生じた.本検討は測定可能域の再検討と測定できない場合の対処法についてまとめ,今後の検査につなげることを目的とした.【機器・試薬】使用機器:全自動血液凝固測定装置CA-1500(シスメックス株式会社)試薬:NSオートDダイマー(タイプB),NSオートP-FDP(株式会社ナスカ)試料:NSオートDダイマー用スタンダード(株式会社ナスカ),NSオートP-FDP用スタンダード(株式会社ナスカ)【方法】Dダイマー:高濃度試料を段階的に希釈,4重測定し,理論値との測定誤差を算出した.FDP:段階的に希釈,3重測定した後,ラテックス試薬の混和,ピペット洗浄,測定装置【はじめに】今日、尿比重の測定法として屈折計法と試験紙法の2法が一般的に行われているが、両者の原理の違いから測定値に大きな乖離が生じる場合がある。最も多用されている屈折計法においては、基準となるノモグラムが健常人ベースで設定されているため、とりわけ病的な高尿糖検体に関してはその乖離の程度が大きく、正の誤差となることが知られている。その対応として屈折計法で得られた値から尿糖1%につき0.004を減じた値を補正値とすることが望ましいとされているが、糖そのものを測定原理に含めない試験紙法が補正対応の代替法となり得るか検討した。【対象・方法】対象は2018年4月から2018年6月の3ヶ月間に提出された随時尿検体のうち屈折計法(栄研化学社US3500)による尿糖定性値が3+以上となった検体455件(内訳尿糖3+ 162件、4+ 293件)に関して、試験紙法(栄研化学社US2200)で比重を測定し両データの有意差について調査した。また、無作為に抽出した48件について尿糖の定量検査を行い、尿糖定量値を用いた補正値と試験紙法による測定値の比較検討を行った。内の結露を拭き取る手技を行い再度3重測定し,理論値との測定誤差を算出した.【結果】Dダイマー:理論値1.5µg/ml~23.6µg/mlの範囲は測定誤差10%未満となった. 23.6µg/mlより高濃度では20µg/ml前後の横ばいの値を示した.FDP:低濃度域において,手技前は最大で理論値2.3µg/ml~5.8µg/ml,手技後で理論値2.9µg/ml~5.8µg/mlの範囲で測定できなかった.手技後では低濃度域5濃度15回測定のうち13.3%測定が可能となった.測定誤差は手技前後とも高濃度域(理論値11.5µg/ml~92µg/ml)では10%未満,低濃度域(理論値1.4 µg/ml~5.8µg/ml)では平均28%を示し,ばらつきが生じた.【考察】Dダイマーはシスメックスの保証している0.2µg/ml~20µg/mlの範囲を正しく測定できることが本検討でも確認できた.現在,自動希釈測定に入る値は8.9µg/mlだが,値を高めることを視野に入れたい.FDPでは手技前後で測定可能域を広げることはできたが,正確性には乏しい結果となった.今後,測定誤差を狭めるため,他の対策を模索する必要がある. 【結果】Parametric Paired t-test(two-tail , P<0.01)により検定を行い、尿糖3+の検体群では比重1.028以上、尿糖4+の検体群では比重1.014以上に関して有意差を認めた。尿糖定量値を用いた補正値と試験紙法で得られた値の比較にでは相関係数こそ0.62と良好ではなかったが、両群の差の平均値は0.002とほぼ近似値となった。【まとめ・考察】尿糖3+かつ比重1.028以上、尿糖4+かつ比重1.014以上の検体では、試験紙法で再検を行い、尿糖定量検査を実施しなくとも得られた比重値を簡易補正値として代用することが可能と考えられる。尿糖定量による理論補正値との相関係数が良好でなかった要因としては、屈折計の測定単位が0.001に対し、試験紙法では0.005であることが考えられる。測定上限値が屈折計で1.050、試験紙法で1.030であることに留意すれば、高尿糖検体における尿比重の簡易補正法として試験紙法の有用性が示唆された。今後は糖以外の共存影響物質についても考慮し、より精度の高い尿比重補正法について追究していきたい。 連絡先:048(287)2525 内線2055連絡先048-474-7211(内線451)高尿糖検体における尿比重補正の検討◎小荷田 麻妃1)、工藤 亜紀1)、大関 敬子1)、田村 佳織1)、森田 洋平1)、飛田 若菜1)、清水 則明1)、高山 好弘2)◎小荷田 麻妃1)、工藤 亜紀1)、大関 敬子1)、田村 佳織1)、森田 洋平1)、飛田 若菜1)、清水 則明1)、高山 好弘2)戸田中央医科グループ 新座志木中央総合病院1)、TMG本部 臨床検査部2)戸田中央医科グループ 新座志木中央総合病院1)、TMG本部 臨床検査部2)◎柿沼 智史1)、堀内 雄太1)、植原 明日香1)、松本 千織1)、松永 英人1)◎柿沼 智史1)、堀内 雄太1)、植原 明日香1)、松本 千織1)、松永 英人1)川口市立医療センター1)川口市立医療センター1)屈折計法と試験紙法の乖離に関してEntryNo. 43EntryNo. 66全自動血液凝固測定装置CA-1500におけるDダイマーとFDPの測定可能域の再検討高尿糖検体における尿比重補正の検討屈折計法と試験紙法の乖離に関して血-9(第6会場 10:36~11:13)般-1(第7会場 9:30~9:57)
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