埼臨技会誌 Vol
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生 理超音波検査がVUR診断の一助となったUTI患者の2例腹部超音波検査で偶然発見された性分化疾患の1例87【はじめに】小児の尿路感染症(以下UTI)では,感染が腎まで上行し,腎盂腎炎を発症する.腎盂腎炎を発症する患者の30~50%には膀胱尿管逆流(以下VUR)が認められる.この場合,UTIは一度寛解しても反復して発症するリスクがある.VURの確認には排尿時膀胱尿道撮影法(以下VCUG)が有効だが侵襲性が高く,生殖腺被ばくが問題である.今回低侵襲の腹部超音波(以下US)で膀胱内尿流入角の高角度化を検出する事により,VUR発見に有用だった 2例について報告する.【症例】症例①:2ヶ月男児.3日前より発熱.尿所見よりWBC(3+)・亜硝酸塩(+),血液検査 CRP 3.86 mg/dL WBC 15600 /μLを認めUTIが疑われた. 症例②:3ヶ月男児.38度の発熱で入院となった.尿所見は混濁(-)・WBC(-)・亜硝酸塩(-)であった.【US】症例①:両側腎盂にSFU分類で2~3度の拡張を認め,膀胱内では左膀胱内尿流入角の著明な高角度化を認め,右側もやや不鮮明だが高角度化が疑われた.症例②:左腎盂にSFU 1度の拡張あり,膀胱内尿流入角は【はじめに】性分化疾患(disorders of sex development、以下DSD)とは「卵巣・精巣や性器の発育が非典型的である状態」と定義され、内性器および外陰部が典型的な男性または女性の表現型をとらない疾患群の総称である。DSDそのものは2万人に1人程度の発症といわれている。今回、当院において腹痛や発熱精査目的の腹部超音波検査で偶然発見されたDSDの1例を経験したので報告する。【症例】10代後半、女性。主訴は下腹部痛。【現病歴】数日前より腹痛・咳・頭痛・発熱あり。夜間救急外来受診後も腹痛が持続するため、外来受診し精査目的で腹部超音波検査を施行した。【超音波所見】腹腔内にはリンパ節腫大が散見されるも、虫垂の腫大等発熱の原因を示唆する明らかな疾患は認められなかった。婦人科系疾患の検索では、明らかな子宮・卵巣の確認ができず、念のため表在プローブにて走査を行ったところ、鼠径部に36mm大の腫大LNとは異なる所見の充実性腫瘤が認められた。比較対象のために検索した対側にも約21mm大の類似の充実性腫瘤が認められた。カラー左右ともに高角度で両側VURの存在が疑われた.【経過】症例①:VCUGで左Ⅱ~Ⅲ度,右Ⅱ度のVURが認められ,カテーテル尿培養から菌量106CFU/mL,Escherichia fergusonii, Enterococcus faecalis が分離された.症例②:VCUGで右Ⅲ度,左Ⅱ度のVURを認め,カテーテル尿培養から菌量106CFU/mL,Enterococcus faecalisが分離された.【考察】2症例ともにUSで膀胱内尿流入角の高角度化を指摘できた.特に症例②では尿所見に乏しくUSでの膀胱内尿流入角の高角度化を根拠としてVURが疑われ,VUCG実施に至りVURの存在が証明された.発熱の原因検索においては,先行してUSを行う事により侵襲的検査であるVCUGへ検査を進める動機づけとなり,USがVUR発見に有用であったと考えられた.【結語】今回,腹部超音波がVURの診断の一助となった2例を報告した. 048-287-2525(内線2191・2176)ドプラにて左充実性腫瘤近傍に静脈瘤様のカラーflowみられ、充実性腫瘤と合わせて考察すると停留精巣及び精巣静脈瘤の所見に類似しているように思われた。MRIでも子宮は認められず、両側鼠径部に停留精巣と思われる腫瘤像が描出された。【経過】超音波検査後に確認された病歴で、患者には現在まで生理の発来はなく、乳房発育はわずかな腫大程度、発毛なしとのことで、超音波結果と整合する二次性徴であった。【結果】血液検査ではテストステロン高値、染色体検査で46XY、SRY(+)であり、46XY、DSDの診断となった。【まとめ】今回、偶然に腹部超音波検査で発見されたDSDの貴重な1症例を経験したので、若干の文献的考察を加えて報告する。 川口市立医療センター 生理検査室 048-287-2525(内線2191・2176)川口市立医療センター 生理検査室◎箕輪 真俊1)、横尾 愛1)、坂井 伸二郎1)、山本 えりか1)、清水 早苗1)、角田 真璃1)、矢作 強志1)、原 裕子2)◎箕輪 真俊1)、横尾 愛1)、坂井 伸二郎1)、山本 えりか1)、清水 早苗1)、角田 真璃1)、矢作 強志1)、原 裕子2)川口市立医療センター 生理検査室1)、同 画像診断部2)川口市立医療センター 生理検査室1)、同 画像診断部2)◎横尾 愛1)、坂井 伸二郎1)、山本 えりか1)、箕輪 真俊1)、角田 真璃1)、清水 早苗1)、矢作 強志1)、原 裕子2)◎横尾 愛1)、坂井 伸二郎1)、山本 えりか1)、箕輪 真俊1)、角田 真璃1)、清水 早苗1)、矢作 強志1)、原 裕子2)川口市立医療センター 生理検査室1)、川口市立医療センター 画像診断部2)川口市立医療センター 生理検査室1)、川口市立医療センター 画像診断部2)EntryNo. 88EntryNo. 89超音波検査がVUR診断の一助となったUTI患者の2例腹部超音波検査で偶然発見された性分化疾患の1例生-23(第6会場 13:43~14:10)生-24(第6会場 13:43~14:10)
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