埼臨技会誌 Vol
79/135
[はじめに]生 理77心電図所見から冠攣縮性狭心症が疑われた1症例77歳男性 既往歴 糖尿病冠攣縮性狭心症は冠動脈が攣縮により狭くなり,一時的な心筋の虚血が起こる現象である.短時間の変化のため,心電図検査施行時には所見が得られないことが多いが,完全房室ブロック,心室頻拍や心室細動へ移行することがあり注意を要する.今回,胸痛時に施行した12誘導心電図により冠攣縮性狭心症が疑われ,診断に至った症例を経験したので報告する.[症例・経過]悪性リンパ腫の化学療法目的に入院.入院の約1週間前から数回,胸部絞扼感を自覚していたが安静にて軽快していた.入院後,12誘導心電図検査を施行した際,胸痛を自覚し,Ⅱ,Ⅲ,aVFにて約0.7mVのST上昇がみられた.主治医にパニック値報告し,到着までのおよそ3分の間,引き続き心電図波形を観察していたところST上昇が消失した.この時点で患者本人の胸痛は消失していた.その後,緊急冠動脈造影検査を施行した際に,再び胸痛と【はじめに】心収縮が保たれた心不全 (HFpEF:Heart Failure with preserved Ejection Fraction) は心不全症例の約40%にみられ,心収縮が低下した心不全 (HFrEF:Heart Failure with reduced Ejection Fraction) と同様にその予後は不良であることがわかってきた.この病態をみてゆくうえで,左室拡張機能評価は重要である.2016年4月にASE/EACVI (American Society of echocardiography / European Association of cardiovascular Imaging) の心エコー図による左室拡張機能評価ガイドラインが改訂された.評価項目が多く,複雑であった従来のガイドラインと比べてアプローチが単純化され,臨床で使いやすくなった感がある.今回我々は新しいガイドラインに基づいて左室拡張機能を計測し,グレード分類を行い統計解析した結果を報告する.【対象及び方法】2017年7月から2018年6月までの1年間,当院生理検査室で施行された20歳から90歳代の経胸壁心エコー図検査連続2991例を対象とした.ガイドラインに示されているアルゴリズムに当てはめることができない心疾患(肥大型及び拘束型心筋症,弁膜症,心臓移植,心房下壁誘導でのST上昇が出現し,硝酸塩投与にて改善を認めている.冠動脈造影では,狭窄や閉塞の所見はなく,血液生化学検査ではトロポニンIなどの心筋逸脱酵素の上昇は認めなかった.心臓内科へ転科後,カルシウム拮抗剤にて状態の安定を図り,化学療法を行うこととなった.[まとめ]今回の症例では,胸痛時に施行した12誘導心電図検査結果から精査が行われ,冠攣縮性狭心症の診断に至った.本症例のように,自然発作時に心電図で虚血性変化をとらえ,発作消失時にその心電図変化の消失を見ることは稀である.症状出現時に得られる心電図所見は診断上重要であるが,タイミング良く検査できないことも多い.本症例のように,自然経過で有力な心電図所見が得られることもあるため,患者の病態を考えながら検査に臨むことが,患者の早期診断・早期治療に寄与すると考えられた.細動,房室ブロック及びペーシング),描出不良症例の956症例を除外し,2035症例を対象とした. 【結果】拡張機能分類結果は,拡張機能正常1101件,拡張機能不確定403件,拡張機能障害グレードⅠ204件,重症度評価不能54件,グレードⅡ226件,グレードⅢ47件であった.【考察】この新しいガイドラインを用いた左室拡張機能評価は簡便であり,通常の検査に取り入れやすいものであった.当院では拡張機能と年齢や発作性心房細動との関連につき報告してきた.これまでにも左室拡張機能のグレード評価はHFrEF,HFpEFおよび急性心筋梗塞等の様々な状況において病態予後と関係していることが報告されている.今後は知見が集積されることでさらなる臨床応用が期待される. 連絡先:048-873-4111 内線2281 連絡先 042-984-4236◎根本 みく1)、島田 典子1)、大谷 伸生1)、井上 準子1)、田地 功忠1)、小林 清子1)、海老原 康博1)◎根本 みく1)、島田 典子1)、大谷 伸生1)、井上 準子1)、田地 功忠1)、小林 清子1)、海老原 康博1)埼玉医科大学 国際医療センター1)埼玉医科大学 国際医療センター1)◎小林 みちる1)、西田 満喜子1)、堀内 文美1)、山浦 久1)、立川 一博1)、宇田川 智子1)、秋間 崇2)、神吉 秀明2)◎小林 みちる1)、西田 満喜子1)、堀内 文美1)、山浦 久1)、立川 一博1)、宇田川 智子1)、秋間 崇2)、神吉 秀明2)さいたま市立病院 中央検査科1)、さいたま市立病院 循環器内科2)さいたま市立病院 中央検査科1)、さいたま市立病院 循環器内科2)ASEの新しいガイドラインを用いた拡張機能評価の取り組みEntryNo. 26EntryNo. 60心電図所見から冠攣縮性狭心症が疑われた1症例ASEの新しいガイドラインを用いた拡張機能評価の取り組み生-4(第5会場 9:58~10:25)生-3(第5会場 9:30~9:57)
元のページ
../index.html#79