埼臨技会誌 Vol
68/135

【はじめに】ヘモグロビンA1c(以下HbA1c)は,血液中のヘモグロビン(以下Hb)にグルコースが非酵素的に結合したものであり,糖尿病の診断や血糖コントロールの指標として有用である.今回我々は,汎用自動分析装置を用いた酵素法試薬 「ノルディア N HbA1c」(積水メディカル株式会社)(以下検討試薬)について基礎的検討及び相関性の検討を行なう機会を得たので報告する.【方法】(1)同時再現性(2)日差再現性(3)希釈直線性(4)検出限界(5)共存物質の影響(6)プローブ・セルコンタミ試験(7)相関性の検討を行なった.【結果】(1)2濃度の専用コントロールを用い,それぞれ20回測定を行った結果CV%値は,両試料共に5%以内だった.(2)専用コントロール2濃度を10日間測定したCV%値は全て5%以内だった.(3)専用試料を10段階希釈し測定を行い,添付文書の範囲である3.3%から16.6%までの直線性を認めた.(4)低値試料を用いて5つの希釈系列を作製し,10回測定した±2.6SD法による検出限界は4.4%だった.(5)ビリルビンF:50mg/dL,ビリルビンC:50mg/dL,乳ビ:3000ホルマジン濁度【はじめに】炎症性疾患では、サイトカイン刺激によって各種急性相反応蛋白質が血清中で上昇するとともにその付加糖鎖構造が変化することが報告されている。炎症マーカーとして臨床で頻繁に用いられているCRPは炎症が起こっていることは確認できるが、炎症の発症から治癒過程においてどの段階にあるのかは知ることができない。急性相反応蛋白質の1つであるアンチキモトリプシン(ACT)の糖鎖構造は、炎症過程によって変化することがわかっており、糖鎖がACTのどこに付加しているのか、また個々の糖鎖の機能がわかることで検査値の情報量が飛躍的に増加するため、臨床検査、薬物治療においてより有益であると考えられる。そこで本研究ではACTの結合糖鎖を確認するため、レクチンELISA法を用いて解析したので報告する。【方法】解析に用いたACTはカラムクロマトグラフィーを用いてコントロール血清から精製した。ACTの精製度合の確認はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)法を行った。レクチンELISA法は抗ヒトACT抗体をELISAプレートに固相化し、プレートに精製したACTを分注した。66レクチンELISA法を用いたアンチキモトリプシンの糖鎖構造の解析 連絡先:048(973)4799◎蓑輪 雄太1)、石川 純也1)、広井 佑紀1)、山﨑 一輝1)、小林 竜一1)◎蓑輪 雄太1)、石川 純也1)、広井 佑紀1)、山﨑 一輝1)、小林 竜一1)上尾中央医科グループ 上尾中央臨床検査研究所1)上尾中央医科グループ 上尾中央臨床検査研究所1)◎吉長 拓実1)、久保田 亮2)◎吉長拓実1)、久保田 亮2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、埼玉県立大学2)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、埼玉県立大学2)HbA1c測定試薬の基礎的検討-BM9130形自動分析装置を用いた性能評価-まで影響は認められなかった.(6)セルコンタミの影響は見られなかった.尿中β2マイクログロブリンでプローブコンタミの影響が見られたが,項目間に洗浄設定を入力することで影響を回避できた.(7)HPLC法との相関性をN=140で検討した結果,回帰式y=0.7399x+1.37,相関係数r=0.6752だった.その内HPLC法で正常波形を示した試料のみ (N=100)では,回帰式y=1.0114x-0.21,相関係数r=0.9496,異常Hb・HbF高値を示した試料のみ (N=40)では,回帰式y=0.6133x+2.21,相関係数r=0.4960であった.【考察】異常Hbの相関性でHPLC法と乖離が起きた試料については,酵素法では糖化したβ鎖N末端断片を特異的に遊離させるが,HPLC法ではアミノ酸が置換した異常Hbの糖化物がHbA1cのピークと異なる位置に泳動され,異常値を示す事があるので乖離はその影響であると考えられる.【結語】今回行った検討でノルディア N HbA1cは基礎的検討及び相関性において良好な結果であった.異常Hbのように乖離が生じる事もある為,測定原理や特性を理解して使用する必要がある.     連絡先:048-912-3112(直通)反応後、各レクチン-HRP標識物を各ウェルに分注し、さらに反応させた。その後、発色液を各ウェルに分注し、反応停止液を分注後すぐにELISAプレートリーダーで450nmの吸光度の測定を行った。【結果】ACTを精製しSDS-PAGEにより確認したところ、分子量約70000のバンドが1本検出され、精製度合が良好なことを確認できた。ACT結合糖鎖を確認するため12種類のレクチンを用い、レクチンELISA法を行ったところ、PHA-L4、SSA、DSA、UEA-I、MAM、PHA-E4、LCA、ABAの8つのレクチンで反応性が認められた。【まとめ】レクチンは糖鎖と特異的に結合する性質を持つ蛋白質であり、糖鎖構造の違いにより結合するものが異なるため、本研究で反応したレクチンの結果からACTには3本鎖及び4本鎖糖鎖を含んでいることが分かった。レクチンELISA法を用いたアンチキモトリプシンの-BM9130 形自動分析装置を用いた性能評価-HbA1c測定試薬の基礎的検討糖鎖構造の解析化-3(第1会場 9:30~10:07)化-4(第1会場 10:08~10:36)EntryNo. 44EntryNo. 91

元のページ  ../index.html#68

このブックを見る