埼臨技会誌 Vol
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遺伝子病 理細 胞107核酸抽出法の違いによるT790M検出数の比較【はじめに】肺癌患者におけるEGFR遺伝子検査は、分子標的治療薬を有効に使うため、耐性後の腫瘍組織からT790M変異を効率よく見出すことが重要であるとされる。また腫瘍組織の採取が困難な患者には、血漿からの検査が有用とされる。当院の現行法で、核酸抽出不良のため判定不能(PCRで増幅しない)となる血漿検体が複数あった。そこで、新規に核酸抽出機器を導入検討した結果を報告する。【対象】2018年4月~6月に提出された、EGFR-TKIに耐性獲得が認められた血漿検体22件を対象とした。【方法】EDTA-2Na添加採血7mlから血漿を分離し、現行法QIGEN社QIAmp DNA Mini kit (以下カラム法)と新法プレシジョン・システム・サイエンス社magLEADシステム(以下ビーズ法)の2法で核酸抽出した。使用血漿量は、カラム法およそ1~2ml、ビーズ法400μlで、溶出量はともに50μlである。吸光度法で濃度測定し、A260/280の値を比較した。PCRの後、電気泳動でT790Mの検出を行った。【結果】①核酸濃度平均はカラム法4.9ng/μl、ビーズ法7.6ng/μlであった。②A260/280は、カラム法1.94(±0.69)、【はじめに】デスモイド腫瘍は稀な線維性の軟部腫瘍であり再発が多く,WHO分類では中間群に分類されている.今回悪性リンパ腫の既往を有し,臨床的に悪性リンパ腫の再発が疑われた回盲部腹腔内デスモイド腫瘍の一例を報告する.【症例】患者;20歳代男性,X年11月頸部リンパ節腫脹と圧痛を主訴とし,当院内科を受診.頸部リンパ節生検にて悪性リンパ腫(ALK陽性未分化大細胞型リンパ腫)と診断され,CHOP療法が行われた.X+3年3月CT検査にて回盲部の40mm大の腫瘤を指摘され,悪性リンパ腫の再発の疑いで腹腔鏡下回盲部切除術が行われた.【細胞所見】泡沫状の背景に,リンパ球を少数認め、結合性は緩く,核は類円形~紡錘形で,核の切込みなどの核型不整と核小体の明瞭化を呈す線維芽細胞様の異型細胞が散在性に認められた.一部では膠原線維と思われる結合組織に埋没するように紡錘形細胞が観察された.悪性を示唆する核分裂像やビーズ法1.24(±0.14)であった。③判定不能となったものは、カラム法9/22件(40%)、ビーズ法0/22件(0%)であった。④T790Mの検出は、2法で一致したものが2件。ビーズ法のみ検出したものが3件。これらはカラム法で変異なしまたは判定不能であった。【考察】①ビーズ法はカラム法より、使用血漿量が少ないが、抽出された核酸量が多いことから、核酸の回収率が高いことがわかった。②A260/280は1.8~2.0が、純度が高いとされる。カラム法ではばらつきが大きく、ビーズ法では1.8を超える結果は得られなかった。③ビーズ法の核酸溶出液はPCR反応を阻害せず、全例でPCR増幅可能であった。④T790Mの検出はビーズ法の方が良好な結果であった。以上のことよりビーズ法の導入は、T790Mの検出に有効であると考える。連絡先 048-722-1111 (内線4503)壊死物質は認めず,Class Ⅲ(Atypical cells)と報告した.【組織所見】紡錘形細胞が直線状の配列を示し,細胞質は好酸性で核は反応性に腫大していた.腫瘤は固有筋層に浸潤性に増殖していた.免疫染色はα-SMAとDesminは陽性,c-kitとCD34は陰性で,β-カテニンは核内集積を認めた.以上より腹腔内デスモイドと診断した.【まとめ】間葉系腫瘍の鑑別疾患として,GISTや悪性線維性組織球症が挙げられる.デスモイド腫瘍の発生する関連因子として手術創,エストロゲン,家族性大腸ポリポーシス関連遺伝子(APC遺伝子)などが挙げられるが,本症例ではいずれも該当しなかった.また,デスモイド腫瘍は高率に再発が認められるが,関連因子のない症例の再発は低率と報告されている.本症例は完全切除例であったが,若年者のため定期的な経過観察が必要と考えられる. ◎石川 志帆1)、新井 吉子1)、岩田 敏弘1)◎石川 志帆1)、新井 吉子1)、岩田 敏弘1)埼玉県立がんセンター1)埼玉県立がんセンター1)◎内田 真仁1)、鈴木 忠男1)、松永 英人1)、今村 尚貴1)、箕輪 浩映1)◎内田 真仁1)、鈴木 忠男1)、松永 英人1)、今村 尚貴1)、箕輪 浩映1)川口市立医療センター1)川口市立医療センター1)腹腔内デスモイドの1例連絡先048-287-2525(内線2025)EntryNo. 25EntryNo. 79核酸抽出法の違いによるT790M検出数の比較腹腔内デスモイドの1例遺-1(第9会場 9:30~10:06)細-1(第9会場 9:30~10:06)

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