埼臨技会誌 Vol
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[はじめに]当院ではIgA腎症の患者に対し起立性蛋白尿の影響を調べるため早朝尿と随時尿の尿一般検査、尿生化学検査を実施している.起立性蛋白尿を判断するには尿蛋白・尿クレアチニンから算出したP/C比で行われているが,尿一般検査についてはIgA腎症診療ガイドライン2014に特に記載がない.今回早朝尿,随時尿の円柱の種類と数,そしてP/C比の有用性について比較・検討を行ったので報告する. [対象]2013年1月から2018年6月に当院外来で早朝尿と随時尿が同時に依頼されたIgA腎症患者のべ21人の検体82件(早朝尿41件、随時尿41件)とした.[方法]P/C比は尿蛋白・尿クレアチニンを日立LABOSPECT008で測定して算出し,円柱は目視にて鏡検を行った.早朝尿、随時尿それぞれのP/C比と円柱の種類と数について比較した. [結果] P/C比の平均は早朝尿0.97,随時尿1.21であり,随時尿の方がやや高い傾向にあった.早朝尿の円柱は硝子円柱41件(100%),脂肪円柱19件(46.3%),顆粒円柱13件(31.7%),上皮円柱11件(26.8%)であった.随時尿の円柱は硝子円柱41件(100%),脂肪円柱24件(58.5%),顆粒円柱17件(41.5%),上皮円柱21件(51.2%)であった.出現した円柱の種類に差はほとんどなかったが,円柱の数は早朝尿より随時尿の方が増加傾向にあった.赤血球円柱については早朝尿が1件(2.4%),随時尿は2件(4.9%)で少なかった.[考察]結果より随時尿が起立性蛋白の影響を受けていた.起立性蛋白は起床してからの行動や飲食の関係で腎血流量が上昇し,尿細管腔の再灌流に繋がり随時尿の円柱が増加したと考えられる.[結語] 尿一般検査においては随時尿の方が円柱の情報量が多く得られるので有用ではないかと考えられる.ただ,起立性蛋白の影響を知るには早朝尿,随時尿のP/C比を調べ比較することが重要であると認識した.[謝辞]今回比較,検討するに当たりご助力いただいた埼玉メディカルセンター山路 安義先生に深謝いたします.連絡先048-832-4951 内線2130【結果】夜間勤務当日の早朝尿を対照尿として検討した.25例中での総蛋白量の平均は対照尿4.75mg/dL,夜間勤務後尿6.42mg/dL,β2-MG量の平均は対照尿3.60μg/dL,夜間勤務後尿7.72μg/dLだった.この中で夜間勤務後のβ2-MG量が5%以上高くなった12例の平均値は11.9μg/dLで,SDS-PAGE及びWB法によるβ2-MGの分子量は全て10.7kDaだった.またIEF-PAGE及びWB法によるβ2-MGの等電点はpI6.5だった.対照尿との間に分子量,等電点の違いは見られなかった.【まとめ】夜間勤務後に尿中β2-MGの量的変化を認める者と認めない者があった.β2-MGの量的変化を認める者の中では夜間勤務後の尿中蛋白量が増加する者のほうが尿中β2-MG量の増加を認める傾向にあった.また,β2-MGの増加した12例においてはβ2-MGのSDS-PAGE及びIEF-PAGEによる分子量および等電点の質的変化はみられなかった.電気泳動法による蛋白解析から,夜間勤務後尿でアルブミンよりも分子量の小さい細いバンドが目立つ例が複数認められたため,今後はβ2-MG以外の蛋白についても検討していきたい.連絡先:048-973-4797 -尿中β2-マイクログロブリンについて- 変則夜間勤務就労者における尿中蛋白の検討 98【はじめに】近年,短時間睡眠や睡眠障害は蛋白尿の発症と腎機能低下に関連し,慢性腎臓病(CKD)の発症にも関連を認める可能性が示唆されている.また,変則夜間勤務就労者における交代勤務の有無による睡眠とCKDに関連した影響について報告がされている.そこで,変則夜間勤務就労者における尿中蛋白の質的変化の検討をした.特に尿中β2-マイクログロブリン(β2-MG)について検討した.【対象】本学倫理審査及びA病院倫理審査の承認を得て,インフォームドコンセントを得られた,変則夜間勤務に携わる職員のうち腎臓に既往のない男女25例(男性:13名,女性:12名,平均年齢:28.6歳)を用いた.【方法】β2-MGの測定はAccute RX(キャノンメディカルシステムズ)で免疫凝集法(N-アッセイLA β2-MG-H Ⅱ ニットーボー)で行った.蛋白の質的検討はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(SDS-PAGE)及びウエスタンブロッティング法(WB法)からβ2-MGの分子量の変化について検討した.次に,β2-MGの等電点による変化はPAGE等電点電気泳動法(IEF-PAGE)及びWB法から検討を行った.◎北澤 悠1)、川音 勝江1)、佐藤 康子1)、小山 博史1)◎北澤 悠1)、川音 勝江1)、佐藤 康子1)、小山 博史1)独立行政法人 地域医療機能推進機構 埼玉メディカルセンター1)独立行政法人 地域医療機能推進機構 埼玉メディカルセンター1)◎川原田彩夏1)、林 恭子2)、金森 きよ子3)、酒井 伸枝4)◎川原田彩夏1)、林 恭子2)、金森 きよ子3)、酒井 伸枝4)埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 検査技術科学専攻1)、医療法人社団 愛友会 三郷中央総合病院2)、文京学院大学医療法人社団 愛友会 三郷中央総合病院2)、文京学院大学3)、埼玉県立大学4)3)、埼玉県立大学4)IgA腎症患者における早朝尿と随時尿の比較円柱とP/C比に着目してIgA腎症患者における早朝尿と随時尿の比較変則夜間勤務就労者における尿中蛋白の検討円柱とP/C比に着目して-尿中β2-マイクログロブリンについて-般-12(第7会場 13:15~13:51)般-13(第7会場 13:15~13:51)EntryNo. 20EntryNo. 97

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