非実行委員の、でしゃばり企画!!

浦和医師会メディカルセンター

神山 清志

・ギシチョ〜〜お願いがあるんですけどぉ〜

 当施設から輩出している実行委員のヨッスィーがオヤジ殺しの眼差しで私に語りかけてきた。通常、我が

女性部下がこんな切り出し方をしてくるときは、面倒なことの命令?であり、人に依頼した時点で既に結果

も結論も決まっており、さらにそれに対する見返りは一切無い(あったことがない:当たり前?)ということは、

散々学習させられている。

・で、何をやらせるわけ?・・・

・学会のお助け企画の一環でぇ〜・・・・・もう決まっちゃったんですぅ〜

・あーわかった!わかった!!やりますよ、もう、ど〜せ断れないんでしょ!!



てな訳で、第一段

「目をひくタイトルのつけ方

分厚い学会抄録集が送られてきた。皆さん先ずは何処見ます?当たり前のことだが、表紙である。

次は・・・学会長挨拶はペラリとめくり飛ばし(学会長スミマセン!)、プログラムや目次かな。

そう!表紙見てゴミ箱に直行しない限りは、演題・表題(タイトル)一覧を見て、どんな発表があるのかを

知るのが普通なのである。

 明日は休日。仕事帰りにレンタルビデオ屋に行ってみた。これから借りるものを決めるとき何を基準に

ビデオを選ぶ?先ずはタイトルを見るのが一般的なのでは。

要は、タイトルは万人が最初に目にする抄録(研究内容)の鑑であり、これによって発表を聞いてみるか

否かを決める第一選択肢なのだ。

 抄録は読んでもらってなんぼ!発表は聞いてもらってなんぼ!ではどの様にしてタイトルをつける??

1.模倣

 ・何事も第一歩は他人のマネから始まる。過去の抄録を読んでみて、oh!これだ!!っていうのを参

考にする。大注意!!何時までもマネしてはいけません。

2.分かりやすくシンプルに

・タイトルを見れば、発表(研究)内容が一目瞭然にわかるようにする。

3.一行にする

・タイトルは文章ではない。簡素明瞭に!

4.略語は用いない

・TP=総蛋白?梅毒TP反応?? TB=総ビリルビン?結核??紛らわしい。

5.“の”連発はやめる

・つながりが悪いときはサブタイトルをつける。

6.大風呂敷は広げない

・タイトルだけは立派だったのに・・と言われないようにする。

7.さらけ出す

・研究の目的・着眼点等を簡素明解に書く。決して意味深なものにしない。

例えば、総ビリルビンの測定で、業界初の測定原理による試薬が発売されて、それを検討したとしよう。

1.TB測定試薬の基礎的検討

 ・簡素明解だが、インパクトが足りない。TBって何だか分からない。何で今さら総ビリルビンの検討

なの?とも思わせる。

2.○○反応を原理とした新しい総ビリルビン測定試薬の性能評価(ヨイショ演題なら企業名も加える)。

・こんな感じかな?でも、今ひとつ足りない!

3.○○反応を原理とした新しい総ビリルビン測定試薬の△△○○形自動分析装置における基礎検討の

結果について

・長っ!つながり悪!!日本語も変!!!文節を簡素化してサブタイトルをつけよう。

4.○○反応を原理とした新しい総ビリルビン測定試薬の基礎検討

  ― △△○○形自動分析装置を用いた性能評価 ―

・まぁこんなもんかな。



第二段

「文章の構成について」

さ〜抄録書くぞ!力(リキ)入れてみたが全くペンが走らない。何?手書きなんかしないよ!いえいえ上様、

左様なことではございません。

抄録を読む人は通常は上から順を追ってみるが、書く方は別に順番などどうでも良い。結果的に上から

下まで一連していれば書く順などさほど気にしなくてよいのだ。試験回答と同じ。できるところから手をつける。

 重要なのは研究結果が忠実に記されており、かつ「起承転結」がしっかりしていることである。大まかな 

決まりは、1.目的(はじめに)2.対象、3.方法(対象とまとめても可)、4.結果(表添付でも良い)、5.

考察(論文では御法度だが抄 録なら結果・考察は対でも良い)、6.結語(まとめ)の順に書くことである。

具体的には・・・・

1.タイトル同様、やっぱり模倣!

 ・決まり事が多いこの世界、ルールに従って書いていれば自然に上手い抄録と同じ書き方になる。

  (内容も同じはダメよ!)

2.読ませる文章ではなく読んで頂く文章を書く

 ・一般演題は発表させていただく場である(頼まれてやるものではない・・・演題足りないから何とか

してって頼まれるけど・・・)。抄録内容が上から目線であったり、先人を批判する内容は厳禁で

ある。質問屋さんは、あなたの書いた抄録を隈無く見ている!!

3.“ですます”調は使わない(発表時は“ですます”調)

 ・たま〜に丁寧語の抄録を見たり、タメ語発表を聞いたりするが、怒りよりも、この人は孤軍奮闘なの

か?と淋しくなってしまう。

4.絶対に文字数を守る

・文字ピッチ詰め、行間詰めはダメ!与えられた文字数で的確に表現するのも技術である

(私も昔はキツキツ抄録でした)。

5.指定以外のフォントは用いない

 ・たまに訳の分からぬフォントを目にするが御法度である。見出しは【 】で括り改行すると見やすい。

  (文字数、行数にゆとりがあれば・・・だが)

6.文頭は主語、文末は述語とする

・これらの検討を、われわれは実施した → われわれは、これらの検討を実施した。

・赤色に、溶液が反応した → 溶液は、赤色に反応した。

7.簡単なことを小難しく書かない(一番短い文節とする)

 ×血清用の試薬で尿の依頼があった場合に正しい結果が得られるか否かを検証した。

 ○血清用の試薬について尿への適応性を調査した。

8.小説家の文章を真似ない

 ×思うに、二法間の相違は、対象試料の劣化に由縁するところであり、通常の依頼実状を全く反映し

ないところと察する。

○今回の結果から、二法間の相違は対象試料が劣化していたことが第一の理由と考えられ、このよう

なことは通常の依頼では起こらないことと考える。

9.訳の分からぬ四文字熟語を勝手に作らない(Webで検索して出てこない熟語は使わない方が無難)

 ・結果良好のため採用した → 結果が良好であったため採用した

 ・試薬継足は原則禁止とした → 試薬の継ぎ足しは原則として禁止することとした。

 ・採用前提に検討実施した → 採用を前提として検討を実施した。

10.院内倫理規定は遵守し、その場合は抄録に記す

 ・なお、本研究は当院倫理委員会の承認を得た後に実施した・・等

11.書き上がったら、共同演者に見てもらうのは当たり前だが、他部門の一番経験の浅い人に読んで貰

い、最後に技師長に見てもらう。

 ・共同演者は、分かっていて読むから、往々にして簡単なミスを見落とす。一方、素人さんは研究内容

が分からないので日本語を見てくれる。また、分からない人が理解できる文章なら誰が見ても理解

できる。

・技師長に見せたら、それ以降は原則として他の人に校閲は頼まない。

12.書き直すごとに、別名ファイルで保存する。

・たかがA4一枚の抄録だが、何度も書き直しをさせられると従順な気持ちは何処かに吹っ飛び、怒りさえも

生じてくる。そんなとき、最初のファイルを開いてみよう。何だこれはと恥ずかしくなること請け合いである。

・何度も書き直していると、どれがどれだか分からなくなる。特に自宅と職場で書いていると、書き直し

前のものを上書きしてしまったり、保存を忘れたりと、泣きたくなってしまうことがある(私はあった)。

一つ一つのファイル名の末に1、2等つけておくと最悪の事態(全部無くなった!)は避けられる。




 簡単にしようと思ってはいたのだが、結局は“うだうだ”とした内容を書き綴ってしまった。百戦錬磨の方々

には、何だこりゃ!?と怒られてしまうかも知れないが、学会発表お初!!の方々にほんの少しでも参考に

なったのなら嬉しい限りである。




 本文掲載の「だより」が皆様のお手元に届く頃は、演題受付は終了しています。しかし、必ず「演題受付

延長のお知らせ」が通知されると思います。それが前提で書いたことをご理解願います。



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