誰にでも出来る学会発表
「テーマはこうやって見つけよう!」編
上司から「もう君も2年目か〜!じゃあそろそろ学会に何か発表したら?」って言われて困っている人いませんか?
「何か」って言われてもね、なかなか思いつかないですよね。「あれやれ、これやれ!」って言ってくれればまだやり
ようがあるのに…だいたい、学会なんて、行くには行ったけど発表なんて自分には無理だと思うし、やり方なんてわか
らない。そんな人は多いと思います。そんな人のためにちょっとしたコツをアドバイス。これさえ読めばいきなり全国
学会はちょっと敷居が高くても、まずは埼臨技学会なら大丈夫?がんばってテーマを探して、学会発表にチャレンジし
てみませんか?
1.なんかへん?
まず重要なのは日々のデータをしっかり見つめること。漫然と仕事をしていると見逃すことでもじーっと見ていると
いろいろなことが見えてきます。検体はネタの宝庫って昔の人はよく言っていましたよ。
1)パニック値が出たら…
パニック値が出るとあわてて再検したり、希釈したり、前回値やほかの項目を参照したり、それでもデータが変らな
いとなるととりあえず医師に報告!「あードキドキした〜」 でもそれで終わらせていたらもったいない。なぜ
そんなデータが出てきたかを考えてみましょう。すぐにわからなくてもきちんと記録しておくことを忘れないで。数
を重ねると傾向がわかったり、使っている薬物が同じだったり…まあ多くは「つまり」や機械のエラーだったりする
んですけどね。
2)データが乖離する?
同じものを計っていても方法や原理が違うだけでデータが変わってくる。良くあることです。定性と定量が乖離し
たり、尿と血液のデータが乖離したりなんて、戸惑うこともあるでしょう。たいていは教科書に書いてある現象です
が、珍しいこともちょくちょくあります。なんとなく原因が推定できたら後はそれを確認してみましょう。「◎◎法
に対する共存物質の影響」なんてタイトルの演題が出来るかもしれません。また臨床の理論と測定値が合わないとき
、それが疾患に結びつくことだってあります。尿アミラーゼがゼロ…ほら(笑)
3)データが変化する
検体保存によって活性低下がしたり、データが変動することはあります。温度・湿度・光・薬物…そういったもの
が測定値に影響することも。環境が及ぼす影響を調べるのは「基礎検討」です。時にはエンドキサンのように生体内
代謝産物のみが測定値に影響するなんてことが後からわかることもあります。
4)これって珍しい?
珍しい症例かどうかは今やネットですぐに調べられますし、わからない症例は医者でも先輩でも聞いてみましょう
。指導してくれる人がいないって人は「研究班」っていう頼もしいお助けグループの力を借りてみてはいかがでしょ
うか?症例報告は手っ取り早い学会発表の手段です。もっとも最近は同意書や倫理委員会の承諾を取る手間もあると
思いますが「一例報告」が増えています。
2.なんでも集計
「とにかく何でも集計してみる」っていうのもひとつの手です。エクセルファイルを縦にしたり横にしたり、遠い目
で眺めたり…何か見えてくることはありませんか? 感染症の傾向でもデータの変化でもなんでもOK。「当院にお
ける◎◎の現状」なんて演題は一見統計だけのようですが、ちょっとした知見が加われば、他の施設から見ても参考
と刺激になります。
3.新しい機器やキット
新しい機器を買ってもらったら、まずはいじり倒してみましょう。もちろん良いところはたくさんあるでしょう。
逆にどこかに問題が見つかるかもしれません。新しいキットが販売されたら、とりあえず試してみましょう。しり込
みすることはありません。新しいキットを試さずに買う人なんか滅多にいませんから。いずれにせよ「良ければ良い」
「悪ければ改善を」って発表をすればいいんです。データと経験は裏切らないっていうのが臨床検査の世界です(笑)
4.ほかの人は何を考えているのでしょう?
あなたの施設のスタッフは検査室に何を望んでいるでしょうか?患者さんは検査技師のことをどういう風に思ってい
るでしょうか?アンケートを取ってみましょう。あなたの施設は防災対策ばっちりでしょうか?マニュアルを調べてみ
ましょう。いろいろ視野を広げてみると新しいことがたくさん見えてきます。
5.業務の協力体制や改善
あなたの仕事は日常検査だけですか? チーム医療の一員として何かに関わっていませんか? 医療安全について何
か取り組んでいませんか? 施設の中で行っているいろいろな改善、検査時間短縮の試み、技術の標準化… 些細なこ
とかもしれません。でもそんなことがほかの施設にしてみれば目からウロコかもしれませんね。
「なんだ、そんなこと?」そうなんですよ。学会のテーマ探しなんてそんなもんなんです。後はそれに気がつくか、
それをどこまで調べるかってこと。あなたの知的好奇心が仕事に向けられている限り、学会のテーマはあなたの前に転
がっていたりするのです。
え?今から始めるから第40回には間に合わない?いやそんなことはかまいません。また次回、そう第41回、そし
て第42回…学会は毎年続き、上司は毎年しつこく「演題ない?」って聞いてきますから(笑)
第40回学会実行委員会 学術部
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